研究課題
腫瘍局所における抗腫瘍効果発揮メカニズムの解明のため、平成28年より千葉大学医学部附属病院脳神経外科を受診し脳腫瘍の診断が得られた患者に同意を得て、末梢血および手術時に摘出された腫瘍組織について、各種免疫細胞の機能解析を行ってきた。令和3年4月までに63例の解析が終了している。さらに腫瘍特異的な免疫学的特徴を明らかにするために、非腫瘍性疾患のコントロールとして脳血管障害患者を対象に、末梢血の解析を開始し、令和3年4月までに12例の解析が終了している。結果、NKT細胞が特異的に認識する抗原提示分子CD1d陽性の膠芽腫が一定の割合で存在することを確認した。膠芽腫のCD1d分子の発現がNKT細胞の細胞傷害活性に及ぼす影響を評価するため、CD1d陰性細胞株U87にCD1d遺伝子を導入し、NKT細胞およびその特異的リガンドであるαガラクトシルセラミド(α-GalCer)を投与した。NKT細胞は、CD1dを強制発現させたCD1d陰性膠芽腫細胞株に対して、α-GalCer依存的に高い細胞傷害活性を示した。CD1d陽性および陰性の膠芽腫患者検体を無血清培地で培養し、樹立したstem-like cellのCD1d発現は陰性であったが、これに分化誘導剤として知られるレチノイン酸(RA)を投与するとCD1d発現が増強した。RAを投与してCD1d発現を増強させたRA-differentiated cellsにNKT細胞を投与した場合の抗腫瘍効果について検討した。CD1d陽性膠芽腫患者検体から樹立したRA-differentiated cellsではα-GalCer処置により、NKT細胞の細胞傷害活性は増強した。以上の結果から、CD1d発現が膠芽腫患者に対するNKT細胞免疫療法の新しい標的となり得ることをまとめ、論文投稿を行った。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Cancer Immunology, Immunotherapy
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