研究課題/領域番号 |
19K18380
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河島 真理子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40803664)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脳深部解剖 / 神経機能マッピング / 三次元コンピュータグラフィックス |
研究実績の概要 |
本研究は、既存の大脳基底核および脳幹部の高精細連続解剖標本画像を3次元化することで、実際の医用画像上での局在を明らかにし、臨床応用することと目指している。 今回われわれは、ヒト基底核・脳幹ホルマリン標本を正中線で左右に分断し、連続断面撮影装置付きミクロトームを使用して50μm厚の矢状断切片を作成し、デジタルカメラにて撮影のうえ、4064 pixels×2704 pixels, 31.4 MB/photo, JPEG formatで保存した。これらを位置補正を行った上で、すべての画像が最適で一貫したコントラストとなるようにソフトウェアにてパソコン上でデジタル加工し、3次元化に向けてのデータの下準備を行った。 得られた解剖標本画像を検討した結果、基底核とりわけPapez回路の一部(脳弓-乳頭体-乳頭体視床路-視床前核)が比較的描出されており、これをターゲットに3次元化を行う方針とした。Papez回路は記憶や情動に関わり、第三脳室を経由する手術や機能神経外科においても重要な神経構造であり、実用的な臨床応用が期待される。 具体的には、3次元画像作成ソフトウェア上で、解剖標本画像上の重要神経構造を描出し、過去症例の医用画像(MRI)とどのように融合できるかを検討する。これに向けて、基底核・脳幹病変を有する症例のMRI画像を抽出し、3次元画像作成ソフトウェアにて、メルクマールとなる視床・乳頭体など重要神経構造のセグメンテーションをすでに行った。過去の症例で実際に融合が可能となれば、前向きに手術症例で術前シミュレーションを行い、有用性について検証する。その結果を論文として発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で、本年度は解剖標本画像の準備までを予定しており、その作業はおおむね実施できたため順調と考えている。一方、解剖標本画像には加工過程で必然的に生じる、医用画像には見られない歪みが生じていることが判明し、単純には医用画像と融合できない可能性が浮上した。また、3D画像作成ソフトウェアの操作に習熟するのにもう暫く時間を要すると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
得られた解剖標本画像は脳幹よりも大脳基底核が中心であり、基底核とくにPapez回路の一部(脳弓-乳頭体-乳頭体視床路-視床前核)をターゲットに3次元化する方針とする。 解剖標本画像をもとに、3次元画像作成用ソフトウェア上で、重要神経構造を描出し、過去の症例の医用画像(MRI)にどのように融合できるかを検討する。可能であれば、ここで一旦論文にて発表を行う。最終的には、前向きに今後の手術症例等でMRI画像と融合させ、術前シミュレーションを行い有用性について検討し、再度論文発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は既存の物品にて作業可能な部分が多く、支出が予定より少なくなった。次年度はコンピュータを使用した作業が中心になること、発表の機会が生じることなどより、使用額が上昇すると見込まれ、記載のように請求した。
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