研究課題
ヒストンH3K27M変異を、マウスグリア細胞へ遺伝子導入することで確立できたマウスH3K27M変異導入グリア細胞(IG27細胞)をマウス頭蓋内へ移植し、神経周囲浸潤を伴うびまん性グリオーマのマウスモデル作成に成功した。このモデルは80年前に提唱されたシェーラーの2次構造を病理組織学的に再現した。IG27細胞の網羅的遺伝子解析のためマイクロアレイを行ったところ、IG27細胞は野生型細胞と比較して解糖系代謝に関わる遺伝子群の上昇を認めた。解糖系制御遺伝子群の中で、グルコーストランスポーター1(Glut1)の上昇に注目し、shRNAを用いたノックダウンIG27細胞をマウス脳に移植した結果、Glut1ノックダウンIG27細胞は通常IG27細胞と比較し、生着腫瘍細胞数が有意に減少し、グリオーマの神経周囲浸潤の頻度が有意に減少した。さらに発現プラスミドを用いたGlut1発現過剰野生型細胞で神経周囲浸潤の再現性を認めた。これによりGlut1が神経周囲浸潤を制御していることが示された。IG27細胞を脳内移植したマウスに対し、Glut1阻害薬を投与したところ、神経周囲浸潤の頻度の低下・標本上の腫瘍面積および腫瘍細胞数の減少を認めた。この結果より、Glut1阻害薬がグリオーマのびまん性浸に対するの新規治療となる可能性を示した。本研究で樹立したびまん性浸潤グリオーマモデルの解析結果から、ヒト小児でみられるhistone H3K27M変異びまん性グリオーマは、histone H3K27M 変異の獲得により、解糖系優位の代謝変化を起こし、周囲の神経細胞間にびまん性に広がっていくメカニズムを有する可能性が示唆された。このようにグリオーマの予後不良の原因となる神経周囲浸潤のメカニズムの一端が解明され、新たな治療法の可能性が示されたことは有意義である。今後さらに浸潤のメカニズムを明らかにすることを目指す。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (2件)
Neuro-Oncology Advances
巻: 3 ページ: -
10.1093/noajnl/vdaa150
https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20201201.html
http://www.med.gifu-u.ac.jp/neurosurgery/