研究課題/領域番号 |
19K18387
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高垣 匡寿 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70724433)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | iPS細胞 / Neurosphere / 脳出血 / 再生医療 / 移植 |
研究実績の概要 |
理化学研究所バイオリソースセンターより昨年入手した細胞標準株である201B7株を使用して大脳皮質オルガノイドを経由するNeurosphereの効率的な誘導法を樹立した(図1)。Neurosphereの解析はまだ行えていないが、前段階の大脳皮質オルガノイドに関しては定量的PCRや免疫染色での解析は行えており、前脳背側方向への誘導が問題なくできていることが確認できた(図2)。このことからNeurosphereも前脳背側の領域特性を持ったヒトiPS細胞由来神経前駆細胞であると考えられる。定量的PCRや免疫染色など更なる追加検証を行い、Neurosphereの特性を調査する必要がある。 このNeurosphereをラット脳へ移植し観察できるようにするためにリポフェクション法による蛍光タンパク質(GFP)の誘導を試みた。誘導はできているものの誘導効率が悪く(図3)、現段階での効率では移植後の観察は困難であるため、より効率的なGFPの誘導法の検討が必要と考えられた。 同時並行でラット脳への移植準備も行った。8週齢のSprague-Dawley(SD)系統のオスのラットを大阪大学医学部附属病院動物実験施設に導入し、皮質下出血モデルの作成のための手術手技の確立を目指した。皮質下出血モデル作成に向けてまずはラットの麻酔導入技術の習得ならびに開頭手技の習得を行い、比較的大きい6mm×6mm大の開頭を安定して行うことができるようになった(図4)。今後はコラゲナーゼを購入して定位的に注入することにより安定した脳皮質下出血モデルラットの作成が必要と考えられた。また、同時並行でラットへの免疫抑制剤(シクロスポリンA)の投与方法の検討も行ない、10mg/kgのシクロスポリンAを毎日腹腔内投与する手技も習得した。今後はこの作成できつつある免疫抑制皮質下出血ラットモデルを使用して移植実験へと移行していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトiPS細胞から大脳皮質オルガノイドを経由した神経前駆細胞の安定的な誘導はできているが、まだ解析が完了しておらず、移植するためのGFP導入Neurosphereの確立にも難渋しているため当初の計画より少し遅れを認める。また、ラット嗅粘膜鞘細胞の採取を行う予定であった連携研究者の異動により、その実施に時間を要する可能性があるため、代替案として実験の容易なシュワン細胞の不死化細胞株などの類似細胞株を使用してハイブリット型グラフトの作成を現在検討している。しかしながら、同時並行で進めている免疫抑制皮質下出血ラットモデルの確立は順調に進んでいるため、当初の計画に十分に追いつくことは可能と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、早々にNeurosphereの遺伝子解析を終了させ、移植に適した細胞であることの確認が必要であると考えらえる。また、エレクトロポレーション法でのGFP導入方法も試してみて導入効率の比較を行い導入効率の良い方法で移植実験を行う予定である。また、新たに標準株2ライン(409B2, 648A1の非ウイルスベクターによるiPS細胞標準株で理化学研究所より入手可能)を追加導入して、ヒトiPS細胞由来神経前駆細胞の安定した確立の確認を行う。当初予定していた嗅粘膜組織との共培養に関しては早期の実施が困難となったため、シュワン細胞の不死化細胞株などでの共培養を行う予定としており、その定量的PCRや免疫染色での評価を行っていく。また、グラフトとして移植できるようにシート化する方法(酵素処理法や温度感受性培養皿UpCell(セルシード社)など)の検討を行う。嗅粘膜組織の分離についても並行して手技の確立を進めていく予定である。 免疫抑制皮質下出血ラットモデルに関してはコラゲナーゼを購入し定位的injectionによる皮質下出血の作成方法の完成を目指す。injectionの部位や量の決定、injectionでの脳ダメージの組織学的な評価、さらには機能評価を行いハイブリット型グラフトの移植準備を進める。
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