研究課題/領域番号 |
19K18388
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤田 祐也 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20839097)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 深層学習 / てんかん / 特徴量抽出 |
研究実績の概要 |
てんかんは1000人あたり5-10人の高い割合で見られる疾患でありながら、診断には脳波や脳磁図の判読が必須である。しかしながら、これらの判読には時間がかかり、専門性が必要であるため、正確かつ簡単に診断するシステムの開発が望まれている。近年、人工知能の分野が発達し、機械学習の手法の一つであるdeep learningの進歩により様々な分野への実用化が進んでいる。本研究ではMEGデータとMRIデータを用いて電流源推定を行い、deep learningを用いててんかん患者と健常者の自動判別を行うことを目的とした。また、Deep learningによる識別の診断制度を上げるため、中間層でどのような特徴量を抽出しているかの検討を行なった。 当院に通院するてんかん患者80名と健常者80名の安静時脳磁図、MRIのデータを利用した。それらのデータから電流源推定を行い、われわれの研究室でMEG用に開発したconvolutional neural network(CNN)であるMNetを用いて、てんかん患者と健常者の判別を行なったところ判定率は90%であった。またMnetが中間層で抽出している特徴量の解明のため、てんかん患者で特徴がみられると思われている 3 つの指標 (relative frequency power (Power) 、phase amplitude coupling (PAC) 、functional connectivity (FC))を加え、それぞれの特徴量を加えた場合のMNetの識別精度を比較すると判定率はそれぞれ 90%、95%、90%であった。これらの結果より、MnetはPower, Functional connectivityの特徴量を抽出できている可能性があるが、 PAC の情報は捉えることが難しかったことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では脳波、脳磁図の同時計測データを用いて、てんかんの自動診断を行う識別器の精度を高めるとともに汎化性を高め、社会実装へ向けた取り組みを行うことを目的としている。 1つ目の診断精度の向上には、学習を行うデータを増やすこと、また学習する際のパラメータを最適化することが重要であると考えられる。本年度は、これまでブラックボックス化していた中間層の特徴量の解明に焦点を当てることで、後者の解明を試みた。その結果、MnetはPowerやFunctional connectivityの情報を特徴量として捉えていた一方で、phase amplitude couplingの情報を捉えることは難しかったことを示すことができた。しかしながら、前者に関してはデータ数は180とまだまだ少なく、より増やすことが求められる。また、2つ目の識別機の汎化については、MEGは非常に高価かつ維持費用が高く、一般診療を行っている病院での導入は困難であることから現在の結果からは汎化はまだ実現できていないと考えられる。一般診療を行っている病院においても、脳波計は導入されており、脳波を利用し汎化することが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
近年、我が国で高齢化社会が進むにつれて,高齢発症てんかん患者が増加しているが,診断に必要な脳波や脳磁図の判読は専門性が高く、一般臨床医が診断できず、誤診されたり重篤な疾患が見逃されたりするケースが多かった。この問題を解決するためには、てんかんの自動診断の精度に加えて、汎化を行うことが重要と考えられる。本研究では、まず脳磁図と頭部MRI画像検査を用いて、診断精度を向上させるために、脳磁図の電流源推定を利用して学習されたMnetの特徴量の抽出の解明を行った。次年度では脳波を用いた汎化を行うことを目標とする。脳波と脳磁図はお互いに共通する成分があり、お互いの情報から転移学習を行うことができるため、脳波から脳磁図の電流源を推定するネットワークや、それぞれの識別器の汎化を行なうことを目標とする。このために、近年注目されている敵対的学習や超解像度ネットワークの方法などを用いることを計画している。 本年度は主に研究体制の構築と結果を示すことに主に重点を置いたため、対外的な発表や論文化は行うことができなかった。次年度以降にそれらを積極的に行なっていく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は初年度であり、研究体制の構築と研究結果を出すために時間が必要であり、海外を含む対外への発表や論文化を行うことができなかった。そのため、使用額に変更が生じ、次年度以降へ持ち越した。
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