研究実績の概要 |
本研究は、悪性髄膜腫の分子遺伝学的異常、特にサイクリン依存性キナーゼ阻害2A遺伝子(cyclin-dependent kinase inhibitor 2A: CDKN2A)の欠失をターゲットにした新たな分子標的治療薬の開発を目的とする。 髄膜腫(悪性髄膜腫:WHO gradeII以上を含む)の臨床検体40検体を用いて治療ターゲットを目指すCKD4/6やMDM2の発現量が再発性や組織学的な悪性度と関連しているかを検討するため、CDKN2A遺伝子よりコードされる p16INKaやp14ARF及びその下流のCDK4/6やMDM2の発現量をRT-qPCRにより半定量的に解析した。以前より髄膜腫の再発性について関連性が指摘されているテロメラーゼ逆転写酵素(telomerase reverse transcriptase: TERT)についても同様に解析した。これらの因子の再発性との明らかな相関は確認できなかった。 又、近年CDKN2Aの点変異p.Ala148Thrが髄膜腫の再発性について関連性があることが明らかになり(2019, Anne Guyot et al.)、この点変異についても当院コホートの臨床検体30検体でサンガーシークエンス法によって解析を行った。この点変異の頻度はWHO grade I、IIの再発性髄膜腫で40%程と報告されているが、当院のコホートでは全例で点変異は認めず、コホート間で変異の頻度に差がある可能性が示唆された。症例数を増やして更なる検討が必要と考えられた。 CDK4/6阻害薬、MDM2 阻害薬の髄膜腫細胞株(ヒト由来髄膜腫細胞株であるIOMM-Lee、HKBMM、HBL-52)への効果の検証(in vitro)については実施が遅れ、細胞株の培養条件のみで以降の実施ができなかった。
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