研究課題/領域番号 |
19K18390
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
横田 千里 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (10771909)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | WT1 / PD-1 / がん免疫 / 免疫チェックポイント / がんワクチン / 脳腫瘍 |
研究実績の概要 |
我々は癌抗原WT1を標的としたWT1ワクチン療法と抗PD-1抗体療法の併用療法の神経膠腫に対する有効性について、マウス神経膠腫モデルを用いて検証した。本腫瘍はルシフェリンにより非侵襲的かつ継続的に腫瘍を定量可能であった。マウスモデルは無治療群、WT1ワクチン療法群、抗PD-1抗体療法群、併用療法群の4群に分け、腫瘍量、生存率、腫瘍内に浸潤する免疫細胞(TIL)の解析を行い、比較した。 生着した腫瘍細胞は移植部位に神経膠腫を形成し、免疫染色にてPD-L1とWT1蛋白の発現を認めた。 無治療では移植後33日以内に全例が死亡するのに対し、WT1ワクチン療法群、抗PD-1抗体療法群では20%、60%が生存した。併用療法では約92%とそのほとんどが治癒し、各単独療法群よりも有意に良い治療成績を認めた。 次に発症した群において腫瘍内の免疫環境を比較したところ、WT1ワクチン療法群では無治療群に比しTILの総数が有意に増加し、さらにCD4陽性T細胞の比率が有意に増加した。腫瘍内にはWT1特異的なCD4陽性T細胞が検出されるとともに、WT1特異的CD8陽性T細胞の有意な浸潤増加を認めた(無治療群0.1% vs WT1ワクチン療法群 3.7%、n=6 ; p<0.05)。この腫瘍内へのWT1特異的CD8陽性T細胞の誘導は、WT1ワクチン療法による末梢血中への誘導と相関関係を認めた。一方、抗PD-1抗体療法群では、CD8陽性T細胞比率の増加傾向を認め、これらのCD8陽性T細胞には抗PD-1抗体が結合して細胞表 面のPD-1発現が抑制されていた。併用療法群ではこれら単独治療時の免疫状態の双方の特徴を認めており、TILの総数の増加に加えてCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、NK細胞の比率の増加を認め、相乗的な抗腫瘍免疫環境が構築されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響で一時実験が中断していた影響で予定より遅延したが、成果の一部を既に論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
WT1ペプチドワクチンおよび免疫チェックポイント阻害剤の併用療法をはじめその他の免疫療法との併用について検討予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究成果の論文を現在投稿・査読中であり、追加実験および掲載費として使用予定である。
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