研究課題
本研究では、がんワクチン療法であるWilms' Tumor 1(WT1)ペプチドワクチン療法と、免疫チェックポイント療法である抗PD-1抗体療法の複合免疫療法について、その併用の有効性と、各治療が腫瘍内免疫細胞に及ぼす効果について解析を行った。解析にはマウス同系脳腫瘍移植モデルを用いた。マウスグリオーマ細胞GL261に、遺伝子組み替えによりWT1を導入した上でWT1とPD-L1を共発現させた。この細胞を頭蓋内に移植して頭蓋内腫瘍を作成し、WT1ワクチン療法、抗PD-1抗体療法および併用療法を実施し、各群における生存期間解析を行った。加えて腫瘍を摘出し、FACSにより腫瘍内免疫細胞についても解析を行った。結果、各単独療法は膠芽腫に有効であったが、併用療法は各単独療法と比較しても有意に生存期間を延長した。また、腫瘍内免疫細胞の解析により、WT1ペプチドワクチンが腫瘍内免疫細胞のうちCD8、CD4陽性細胞を共に増加させ、特にWT1発現細胞を特異的に攻撃するCD8、CD4陽性細胞を増加させる効果を認めた。一方、抗PD-1抗体は腫瘍内免疫細胞の量的な変化は起こさなかったが、腫瘍内免疫細胞のCD8陽性T細胞上のPD-1分子に作用し、細胞障害性T細胞の不活化抑制効果を認めた。これらの治療は、一般に抗腫瘍免疫サイクルと呼ばれる一連のがん免疫応答のうち異なる機序に作用しており、併用することで相乗的な効果増強を得られることを示した。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Cancer Immunology, Immunotherapy
巻: 71 ページ: 189~201
10.1007/s00262-021-02954-z
Neuro-Oncology Advances
巻: 3 ページ: 1~10
10.1093/noajnl/vdab091