研究課題
膠芽腫は脳腫瘍の中で最も悪性の腫瘍で、腫瘍の維持・増大のために大量の糖分を取り込んでいるが、低糖食であるケトン食による食事療法のみで有効性を示した報告はない。膠芽腫におけるケトン体代謝酵素の発現を解析すると、膠芽腫ではBDH1やSCOT (OXCT1)などの酵素が正常脳に比べて著明に低下していた。膠芽腫細胞の脳移植マウスに、ケトン食を投与し、腫瘍の増大および生存期間を解析すると、ケトン食療法のみでは腫瘍の増大を抑制できず、生存期間の有意な延長も得られないことが判明した。普通食の腫瘍とケトン食の腫瘍をメタボローム解析で代謝物を網羅的に解析したところ、普通食腫瘍とケトン食腫瘍では明らかに腫瘍内代謝物のプロファイルが異なることが示された。メタボローム解析での結果では、特にアミノ酸の変化が著明であった。そこで、普通食マウスの正常脳とケトン食の正常脳でアミノ酸量を調べると、右図の様に正常脳でもケトン食にてアスパラギン、トリプトファン、フェニルアラニン等、いくつかのアミノ酸量が増加していた。普通食マウスとケトン食マウスで腫瘍内アミノ酸量を比較すると、数多くのアミノ酸でアミノ酸量が増加していた。正常脳と比較して、腫瘍細胞内でケトン食によって著明に増加していたアミノ酸は、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸であった。したがって、これらのアミノ酸はケトン食下での腫瘍の生存維持、増大に重要なアミノ酸であることが予想された。
2: おおむね順調に進展している
ケトン食による腫瘍内のアミノ酸リモデリングについて、詳細に解析できたので、今後の方針が定まった。また、ケトン食の投与方法およびマウスへの尾静脈への静脈内投与法も確立、安定し今後の薬剤追加の基礎ができた。
ケトン食とグリオーマ治療薬との併用における、代謝リモデリングおよび抗腫瘍効果について解析する。特にアミノ酸代謝の変化について解析する。さらに、ケトン食と膠芽腫治療薬による遺伝子発現変化などについても解析する予定である。
消耗品の納入が遅くなってしまったため。消耗品として使用する予定です。
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