髄損傷の新規治療として再生医療が注目され、実際に一部臨床応用されている。 しかし、臨床試験が進むにつれて連動機能改善の効果に限界かあることがわ かってきた。われわれはこれまで、ヒト頭蓋骨から間葉系幹細胞を分離・培養し、神経系細胞に分化しやすいことを発見した。また、ラット頭蓋骨から間葉系細胞(Mesenchymal stem cells: MSCs)の分離・培養を行い、ラット頭蓋骨由来MSCsは神経栄養因子を豊富に分泌すること、脳虚血モデルラットに対するラット頭蓋骨由来MSCsの移植が有効な機能改善効果を示すことを見いだした。本研究では、これらの点を踏まえ、ラット脊髄損傷モデルに対して頭蓋骨由来MSCsを用いた再生医療が運動機能改善に与える効果を検討し、その作用機序について明らかにすることを目的としている。また、その成果によりヒト頭蓋骨由来MSCsを用いた脊髄損傷に対する新たな再生医療の開発および臨床応用を目指し、社会のニーズに応えることを目指している。本研究において、①ラット脊髄損傷モデルに対する 細胞移植の至適条件の確立、②移植細胞の違いにおける運動機能改善効果の検証、③回復に寄与する遺伝子の探索および運動機能改善との関連性の検証、④細胞移植の違いにおける組織学的改善効果の検証の順に検証をすすめ、データの整理を行う予定としている。ラット頭蓋骨由来MSCsを脊髄損傷モデルラットに移植したところ、良好な機能改善効果が示されている。今後はラット長管骨由来MSCsについても移植効果について検討し、ラット頭蓋骨由来MSCsの有効性にいて比較検討を行っていく予定である。
|