2022年度には脳出血モデルマウスを用いて、脳組織と血液を回収し、浸潤単球と血液単球の性質変化が一致するかを調査した。脳に浸潤した単球は脳出血1日目にはLy6C highの炎症性単球の割合が増加しているが、7日目にはその割合が有意に低下していた。加えて、浸潤した単球・マクロファージとマイクログリアにおいてCD11cの発現レベルは脳出血7日目には増加していた。浸潤単球において、Ly6Cの炎症性単球からCD11cを発現する樹状細胞(Dendric Cell)様の性質を示す様に形質が変化した可能性があり、これらの単球は脳損傷後のdebrisの除去を行なっている可能性が考えられる。それを証明するためにはこの単球の細胞集団を回収して更なる詳しい調査が必要である。 また、CD11c陽性マイクログリアは中枢神経の発達過程において髄鞘形成に重要な役割をきたすだけでなく、神経障害時に神経保護的に働く可能性がある細胞集団であり、治療のターゲットとなる可能性がある細胞集団であるとされている。どのような働きを実際に行なっている細胞集団であるかは、同様にCD11c陽性マイクログリアを回収して更なる詳しい調査が必要である。これらの脳浸潤単球で起きている変化が、血液中単球でも同様に起こることを期待し、脳出血1日目と7日目で血液中Ly6C high単球の割合を調査したが、7日目においてもLy6C highの炎症性単球の割合は高いままを維持しており、残念ながら一致していなかった。血液中の樹状細胞の割合も同様に脳出血1日目・7日目で変化を認めず、今回用いたマーカーでは脳内単球の変化を血液中の単球で評価することはできなかった。
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