研究実績の概要 |
中枢神経原発リンパ腫患者(PCNSL)から採取した腫瘍細胞を酵素的に処理を行い, 免疫不全マウスに移植した. 患者20例中17例で腫瘍形成が観察できた. Whole exome sequenceにてMYD88, CD79B変異は高頻度に検出され, 解析上早期に出現するドライバー遺伝子として検出された. また複数回継代しても常に保持されていたことから, 共通の下流であるNF-kB経路が腫瘍増殖に強く関与していることが予想された. PCNSLではFDG-PETの集積が高いことが知られているが, PDXモデルにおいても同様にFDG高集積を認めた. 腫瘍細胞においてはhexokinase 2 (HK-2)などの解糖系蛋白が高発現しており, 薬物的, 遺伝子学的に解糖系を抑制することで, 強い細胞活性の低下を認めた. MYD88, CD79B変異を持つPDXでは解糖系蛋白が高発現しており, MYD88, CD79BをノックダウンするとNF-kB経路のキーシグナルであるRELA/p65の発現抑制とともに, HK-2の発現低下と, 細胞活性の低下を認めた. 免疫不全例のPCNSLでは, LMP1をノックダウンするとRELA/p65の発現抑制とともに, HK-2の発現低下と細胞活性の低下を認めた. RELA/p65のノックダウン, 薬物的な抑制によっても解糖系の抑制を認めた. PCNSLではMYD88/CD79BもしくはLMP1 によるNF-kB経路関連の遺伝子異常によりRELA/p65が活性化し, 強い解糖系依存を誘導していることが示された. 細胞株に対しHighthrouputにて効果的に細胞抑制効果を持つ薬剤を探索したところ, NF-kB経路の下流に対する抑制薬が候補となった。特にプロテアソーム阻害薬が効率的, かつ網羅的に細胞株に対する細胞増殖抑制効果を持つことを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究材料は患者由来細胞株であり, 新規の細胞株樹立は患者数に依存する. 本年は5例と順調な樹立数であった. 現在まで樹立した細胞株はavailableな状態であり, 滞りなく実験が進められる環境であった. 遺伝子強制発現に関しては前年同様shRNAによるKnockdown効率が悪いが, 追加で2例で検証できた。ポリブレン法の他, レトロネクチン法を用いたが, 感染効率の向上は得られなかった. 強力にPCNSL細胞株の細胞活性を抑制する薬剤が同定され, 細胞株を用いた薬剤作用機序の解析, in vivo検証を行うことができている.
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