研究課題/領域番号 |
19K18400
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 信 自治医科大学, 医学部, 病院助教 (80742345)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 拡張現実 / ニューロナビゲーション / 手術用顕微鏡 / 脳神経外科学 |
研究実績の概要 |
この研究は、手術用顕微鏡に適用可能な拡張現実(AR)ナビゲーションの開発を目指すものである。本研究が実現することにより、解剖が複雑でオリエンテーションの獲得が困難な顕微鏡手術に、解剖をわかりやすく理解できるARを用いた情報提示を導入でき、顕微鏡手術の成績改善が期待される。本年度中までにシステムは概ね完成し、実用化に向けて現在様々な評価を行っている。 まず、開発されたシステムの概要を説明する。システムは制御コンピュータと付属タブレット端末、および手術用顕微鏡に接続するための各種ポートから構成される。顕微鏡には接続ポートを通じて接続される。これにより、タブレット端末と顕微鏡の両方を用いたAR手術支援システムが実現された。本システムの有用な点は、①顕微鏡のみならずタブレット端末にも対応することで、術者は常に最良のARメディアを選択できる点、②特定メーカー、機種を問わず様々な手術用顕微鏡に対応できる点、が挙げられる。 本年は、ファントムを用いた検証を主として行った。まず様々な機種の手術用顕微鏡に本システムが対応することを確認した。結果として最新の手術用顕微鏡から、導入数十年を経た極めて古い機種の手術用顕微鏡に至るまで適用可能であることを確認し、利点②の実現可能性が実証された。続いて精度検証を行い約1.5ミリと、先行他システムに劣らない精度誤差であることも確認された。 今後は模擬手術や臨床応用を通じて、本システムの利点①が、臨床上どのような利点を術者に与えうるのかの評価に移行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本システムが先行他システムに対して有用な点は、①顕微鏡のみならずタブレット端末にも対応することで、術者は常に最良のARメディアを選択できる点、②特定メーカー、機種を問わず様々な手術用顕微鏡に対応できる点、が挙げられる。本年は、ファントムを用いた検証を主として行いこれらの利点がしっかり確保されている事を確認することが出来た。 まず様々な機種の手術用顕微鏡に本システムが対応可能である事を確認した。結果として最新の手術用顕微鏡から、導入数十年を経た極めて古い機種の手術用顕微鏡に至るまで適用可能であることを確認し、利点②の実現可能性が実証された。続いて精度検証を行い約1.5ミリと、先行他システムに劣らない精度誤差であることも確認され、システムの安定性も確認された。 今後は模擬手術や臨床応用を通じて、本システムの利点①が、臨床上どのような利点を術者に与えうるのかの評価に移行する予定であるが、模擬手術段階では開頭手技などマクロ手技にはタブレット端末が、顕微鏡手技には顕微鏡を用いたARが有用であることが確認されており、利点①が術者にもたらすメリットが大きいことも示された。 このため、安定性において先行他システムに劣らず、重要な二つの利点を持つシステムの開発が実用に近い段階まで進捗しているため、概ね順調に進展していると自己点検される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は二つの大方針のもとに行う。 一つ目は完成したシステムの臨床上の有用性の検証である。模擬手術や臨床応用を通じて、本システムが術者や手術成績に与えうる影響を評価する。必要であれば適宜改良、再開発を行いながら真に実用的なシステムの構築を目指すものである。 二つ目はシステムのブラッシュアップである。現時点においても概ね実用に耐える水準となっているが、本システムには手術用顕微鏡の倍率変更に自動追従できないなど、未だに改良を要する点も散見される。臨床上の有用性検証に並行して、現状の問題に対応するようなアプリケーションの改良、改善を行っていく。 課題である倍率への自動対応については、画像認識を用いたシステムの開発を行っている。これは術野から特徴点を見出し、これらを追跡することで倍率の変更を自動検知、追従するものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナウイルス感染症流行の影響が大きく、本研究の進捗にも影響を与えた。 システム開発のパートナー企業は東京に所在するため、緊急事態宣言等の影響による休業および担当者の自宅勤務、移動制限によって、システム開発のスケジュールに影響を与えた。このため本年度予算で執行される予定であったハードウェア購入経費が、システム開発の遅滞による購入機種選定の遅れの影響で執行されずに、結果繰り越しとなった。 本年度後半からはWeb会議などを活用することで、プロジェクト全体が再始動しており、2021年度前半にもハードウェア構成を決定し、開発を加速させる予定である。
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