研究課題/領域番号 |
19K18401
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 瑞仁 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70836759)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脊索腫 / 骨破壊 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / リモデリング |
研究実績の概要 |
脊索腫は斜台や仙骨に生じる骨破壊性の腫瘍であり、あらゆる集学的治療を行っても根治することは困難な難治性疾患である。現在までに腫瘍細胞の増殖を抑える治療は、複数開発されているが、骨破壊によって生じる脳神経麻痺が患者の日常生活動作に大きく影響するため、骨破壊の機序を解明することは新規治療の開発には必須である。現在までに解明された脊索腫の骨破壊機序はなく、申請者は予備実験にて、破骨細胞以外の骨破壊機序が存在する可能性を確認している。脊索腫細胞にタンパク質分解酵素マトリックスメタロプロテアーゼ13(MMP-13)が、骨破壊に関与していることが示唆された。さらに、脊索腫の浸潤したヒト斜台をマイクロCTで解析し骨密度の低下を認め、さらに酸性環境が骨破壊と関与している可能性も示唆され、実際のヒト脊索腫培養細胞においても細胞内に酸性顆粒の存在が示唆されている。本研究において、脊索腫における骨破壊の機序を解明し、それを標的とした新たな治療戦略を提言することを目的とする。本年度は、ヒト脊索腫培養細胞を用いた観察、ヒト脊索腫組織標本を用いた解析により、それぞれ脊索腫に特徴的な所見を得ることに成功した。特に組織標本で得たタンパク質分解酵素の発現は未だ報告のないものである。一方で、上記で得た所見をin vivo modelで再現するため、その樹立を試みており、細胞生着のための条件検討にはやや時間を要した。今後はin vivo modelの樹立含め、さらに研究計画を遂行していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織学的検討より脊索腫は、脊索腫に特徴的な多数の小胞を持つ担空胞細胞と細胞内小胞を持たない紡錘形細胞から構成される不均一な細胞集団であることが確認されている。脊索腫細胞株JHC7を用いた培養細胞のタイムラプス長期観察にて、脊索腫細胞は分裂・増殖だけでなく、特徴的な挙動を示し、骨破壊に関与している可能性が示唆された。また、骨代謝シグナルを負荷することによりその挙動はさらに刺激されることを確認した。一方で、我々が保有するヒト脊索腫病理組織学的検体にてCathepsin K、MMP-13を含め複数のタンパク質分解酵素の発現が骨破壊に寄与している可能性もつきとめた。また、上記含め得られた特徴的な所見の再現を得る事、さらに本研究計画で明らかにした機序を元に考案する骨破壊抑制を目的とした治療を将来的に評価するために、複数のヒト脊索腫細胞株を用いたin vivo modelを作製することも試みた。現段階で頭蓋冠や、仙骨に生着することを確認したが、その生着の確実性を上げる工夫が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、脊索腫細胞株を用いたin vitro解析、及び保有する病理組織標本を用いた解析を続け、同時にin vivo modelの樹立をさらに試みる。骨破壊が生じる時期を正確に同定するため、IVISによる生体イメージングを活用する。保有する脊索腫細胞株にffLuc(Venus蛍光タンパク質とLuc2ホタルルシフェラーゼの融合遺伝子)発現レンチウイルスベクターを感染させ、セルソーターにより、ffLucが安定高発現する細胞株を単離し、NOD/SCIDマウスの頭蓋冠、仙骨に移植する。移植方法を本年度から複数考案しており、移植細胞数含め、生着の確実性含め最適な移植法を探索する。未だ確実に骨破壊像が得られる脊索腫 in vivo modelは定まっていない。
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次年度使用額が生じた理由 |
効果的に物品調達を行った結果であり、次年度の研究費と合わせて試薬・消耗品などの購入に充てる予定である。 次年度は、より細胞培養、及び動物実験を行っていく、その上でまず動物購入・飼育費に費用がかかる。本治療計画はヒト細胞を用い、昨年度BALB/C由来のNude mouseでの生着は困難で、NOD/SICD mouseを用いる必要があることは明らかになっている。以上含め、その他、培養関連試薬、組織解析の関連試薬を中心に購入予定である。
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