研究課題
最終年度は小児・成人患者および健常者のリクルートを継続しつつ、既存データの解析を行った。成人もやもや病患者において、脳血行再建術前後の13患者15半球の比較解析を行い、もやもや病の脳血行再建術後に脳血流を改善させると、上昇していた水成分が低下することが確認された。いっぽう全半球の比較では、神経細胞密度やネットワーク構造単純化は明らかな変化を認めず、水成分増加と神経細胞密度やネットワーク構造の変化は異なる病態生理を有すると考えた。認知機能の改善の得られた患者と得られなかった患者を比較すると、認知機能の改善が得られた患者でのみ前頭葉白質でネットワーク構造の変化がみられ、拡散MRIによる脳微細構造評価により認知機能の改善に関連する神経細胞変化を同定できる可能性が示唆された。この成果はMagnetic Resonance in Medical Science誌に掲載された。研究期間全体を通じて、成人もやもや病にはミエリン障害が存在しているが、認知機能との関連はミエリンよりも神経細胞密度でより強いこと、脳血行再建術前後で水成分上昇が軽減し、認知機能の改善が得られる患者ではネットワーク構造の変化もみられることを示した。これらの結果から、成人もやもや病の認知機能のバイオマーカーとしてはミエリンよりも神経細胞密度やネットワーク構造のパラメーターがより有用であることがわかった。術前後の水成分の変化に関しては、その機序としてGlymphatic system機能不全の回復、血液脳関門機能破綻の改善が予想され、新たな研究課題の立案につながった。小児もやもや病患者、健常者については、COVID-19パンデミックもあって症例リクルートに難渋、現時点で有意な所見も得られていない。小児期はそもそも神経細胞構築やミエリン密度の年齢差が大きいため、より症例を蓄積し再解析が必要と考えた。
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Magnetic Resonance in Medical Sciences
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10.2463/mrms.mp.2022-0146