研究課題
① 新規ホウ素化合物(BAMP)を用いて、中性子線照射実験(in vitro)を行なった。培養細胞(CT26)にホウ素濃度として10ppmを24時間暴露後、中性子線照射を行なった結果、BAMPを暴露させていないコントロール群と比較して、有意に殺細胞効果が得られた。特にBAMPを暴露後、細胞表面をPBSで洗浄した群においても殺細胞効果が得られていたことから、BAMPが細胞内に取り込まれていることが示唆された。②BAMPを用いて、中性子線照射実験(in vivo)を行なった。CT26細胞を皮下移植したマウス(BALB/cAJcl,female)にBAMPを10mg B/kgおよび24mg B/kgで投与し、24時間後に中性子線照射を行なった結果、他のコントロール群(照射のみの群、無治療群)と比較して、有意に抗腫瘍効果が得られた。さらに、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用医薬品として製造販売承認を得ているBPA投与群と比較しても、同様の抗腫瘍効果が得られており、特に低容量群(10mg B/kg)においては、より優れた抗腫瘍効果が得られた。また、BAMP投与群は、どちらの投与量においても体重減少など顕著な毒性・副作用は確認されなかった。③昨年度(2019年度)に得られた薬物動態試験の結果から、BAMP投与群はBPA投与群よりも腫瘍内ホウ素濃度が低いことが確認されている。しかしながら、②の結果において、BAMP投与群はBPA投与群と同等かそれ以上の抗腫瘍効果が得られている。本メカニズムの解明するため、DNAマイクロアレイ解析を行った結果、BAMP投与による免疫の活性化が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
2020年度(令和2年度)の計画における各種実験項目(in vitro及びin vivoにおけるBNCTによる治療効果の確認)を予定通り行うことができた。
計画はおおむね順調に進展しており、2020年度(令和2年度)においても計画通り進めて行くことを第一課題とする。本年度の実験はマウス皮下腫瘍モデルを用いて行っており、今後は脳腫瘍モデルを用いて同様の実験を行う予定である。また、これまでの各種データを補完するために、他の細胞 (HUVECなど)での実験やマウスへの投与量や投与経路を変えた薬物動態試験を検討する。
次年度使用額は531円と少額であり、次年度に予定される実験を行なうための試薬購入の一部に充てる。
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