本研究ではiPS細胞からastrocyteへの分化誘導を行う必要があるため、まず健常人由来iPS細胞を用いたastrocyteへの分化誘導条件の検討を行った。健常人由来iPS細胞は201B7細胞株を用いた。まずneurobasal mediumを用いて、iPS細胞から神経幹細胞への分化誘導を試みた。15日間の培養期間を経て、細胞は神経幹細胞マーカーであるnestin及びPAX陽性細胞へと変化しており、神経幹細胞への分化誘導が行えていると考えられた。引き続き神経幹細胞からastrocyteへの分化誘導を試みるべく、epidermal growth factor(EGF)およびciliary neurotrophic factor(CNTF)を併用した培養方法を試みたが、十分なGFAP陽性細胞が確認できず適切な分化誘導条件は決定できなかった。過去の報告では、astrocyteへの分化誘導にはEGF、CNTFの他にbone morphogenetic protein 2(BMP2)やheregulin β1などを併用した方法などが用いられており、培地にもfetal bovine serum(FBS)やknock-out serum replacement(KSR)などが使用されている。これらの因子の中で、astrocyteを誘導するための適切な組み合わせを決定することがまずは必要と考えられる。また神経幹細胞の誘導効率は正確に測定していないが、細胞のソーティングを行ってからastrocyteへの分化誘導を行う方が確実に誘導できる可能性がある。astrocyteへの適切な分化誘導条件を確立した後にATRX症候群患者由来iPS細胞からのastrocyteへの分化誘導を行い、病態解析のモデルの作成を目指している。
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