研究課題
食生活の欧米化に伴って本邦でも急増する頚動脈狭窄症は、画像上の狭窄率によって脳梗塞発症リスクと治療方針を判断している現状だが、プラーク脆弱性を反映しないため診断精度の点で限界がある。アポトーシス細胞がマクロファージの貪食により除去される過程をefferocytosisといい、その障害は動脈硬化性病変の進行を引き起こす。本研究の目的は、efferocytosisの過程でアポトーシス細胞とマクロファージの橋渡しを行うMfge8に着目し、脳梗塞発症リスクの正確かつ簡便な診断法を確立することである。頚動脈狭窄症の患者を対象とした臨床研究を行い、Mfge8の血中バイオマーカーとしての有用性を検証する。脳梗塞に対する正確な診断と治療法開発により、寝たきり患者の減少や医療費削減等の大きな社会的波及効果が期待される。症候性および無症候性頚動脈狭窄症患者37名から採血検体を採取した。Mfge8に加え、efferocytosisの関連分子であるCD47、GAS6、IL-10、IL-13、MERTK、MPOについて、血中濃度の測定を行った。解析により、症候性病変・不安定プラークと各種efferocytosis関連分子の間に、有意な相関関係を確認した。以上の結果から、目標としていた「血中Mfge8測定およびefferocytosis関連分子測定による頚動脈狭窄症の脳梗塞発症リスク診断」という概念実証を確立した。
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