治療実験の為のmodel mouseの作成を当初予定していたが、新鮮な腫瘍検体を利用したprimary cultureでの細胞株モデル樹立実験を先行して行っている。すでに数回の継代に関しては可能である事が確認されているが、想定通り細胞自体の増殖速度が悪性腫瘍などに比較してやや遅く、培養株樹立の為の培養液調整や継代時期などの調整を行って、治療実験に用いるのに最適な条件を検討している。各種のホルモンの分泌能に関しても測定をし、培養細胞の性質についても注意深く観察を続けている。また、樹立される細胞株に関しては、頭蓋咽頭腫腫瘍細胞としての性質を持ち続けているかどうかの確認を今後進める必要があり、培養細胞の発現遺伝子による解析が検討される。 頭蓋咽頭腫細胞株の樹立ができれば世界的にも初めての非常に貴重な細胞株となり、今後の治療実験に関しても薬剤などの効果の評価方法として広く世界的にも利用が可能になる。この事は頭蓋咽頭腫研究にとって非常に大きな一歩となり得るので現在はこの実験に主に注力している。現在はadamantinomatous typeの腫瘍細胞の培養を行っているが、すでに治療効果が期待される薬剤の存在するpapillary typeの腫瘍細胞も培養する事で、頭蓋咽頭腫細胞の双方のタイプにおける治療実験が可能になり得る。 また、当初からの予定の遺伝子変異解析に関しては症例数がある程度集まった時点での解析を検討している。昨年度も頭蓋咽頭腫自体の手術症例は平年通りであったが、再発症例も含まれており今後の新規症例の蓄積を待って追加での変異解析を行う予定である。
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