研究実績の概要 |
びまん性内在性橋神経膠腫 (diffuse intrinsic pontine glioma: DIPG)は、小児固形癌の死因の第1位であるが、腫瘍は外科的切除が困難な脳幹にあり、しかも有効な化学療法が確立しておらず、放射線治療を行なっても平均生存期間は約10ヶ月と非常に予後不良疾患である。網羅的な遺伝子解析が進み、ヒストンの遺伝子変異,特にH3.1 K27Mを持つDIPGは、activin A receptor type I (ACVR1) 遺伝子変異が併存することが判明した。 本研究は、DIPGにおけるACVR1(ALK2)阻害薬による新たな治療法の開発を目的とする。申請者らは、自ら樹立したACVR1変異を有する患者由来DIPG細胞株を用いてALK2阻害薬のin vitro実験を行うことを目的としている。本年度はH3K27Mの変異を持つDIPG細胞株では、DNAのメチル化が広範に低下していることを検証した。またMGMTのプロモーター領域のメチル化も低下しており、MGMTが発現亢進していることで、通常臨床で使用されているテモゾロミドの効果が乏しいことを検証した。またALK2阻害薬の一つであるK02288での治療実験を行い、ACVR1変異を持つDIPG細胞株では効果が期待されることを示した。 Abe, H., Natsumeda, Watanabe, J (2020). MGMT Expression Contributes to Temozolomide Resistance in H3K27M-Mutant Diffuse Midline Gliomas. Frontiers in oncology
|