神経膠腫が分泌した細胞外小胞が周囲のマイクログリアに作用して、周囲の微小環境を腫瘍自身が有利な状態に変化させるメカニズムをこれまでの研究で解明した。そこで腫瘍が細胞外小胞を分泌しないように抑制する分子を見つければ腫瘍の増大や成長を抑えることができると考え、これまでの研究結果からNSMase2という分子に着目し、腫瘍細胞での役割について検証した。細胞外小胞の産生に関与し、抑制することで細胞の小胞の産生を抑制することができるとされている。神経膠腫株での発現確認と産生する小胞への影響を検証したが、神経膠腫細胞では産生への関与が低いことが示された。そのため、その後予定していたモデル動物を用いた実験については中止し、実験内容を変更した。先行論文にて培養細胞での細胞外小胞の取り込みを可視化することに成功している。それをモデルマウスを用いた生体内で確認することを目的とし動物実験をおこなった。細胞外小胞へ内包されるCD63タンパクにRFPタンパクを結合させ、産生する細胞外小胞が蛍光顕微鏡で観察できる神経膠腫細胞を作成した。その後にその細胞が産生する細胞外小胞をマウス脳内に移植し、一定時間後にその取り込みを切片を作成し確認をこころみた。しかし、生体内での周囲細胞への神経膠腫細胞由来細胞外小胞の取り込みを確認することはできなかった。マウス脳内に移植する細胞外小胞の数が不足していることや切片作成過程でのタンパク変性が原因と考えられた。コロナウイルス感染症の影響もあり、動物実験を計画通りにはすすめることができず、当初の最終年度の目的である治療への応用に関する実験はおこなえなかった。
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