研究課題/領域番号 |
19K18420
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
大石 正博 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (50646693)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アクアポリン1 / Glioblastoma / MMP-9 / Cathepsin B / 悪性神経膠腫 / 遊走能 / 浸潤能 |
研究実績の概要 |
本研究は悪性神経膠腫(Glioblastoma, GBM)におけるアクアポリン1(AQP1)発現の意義の解明および腫瘍の AQP1発現・機能調節により生じる変化因子の解明を核心となす学術的な問いとし、悪性神経膠腫における血管新生から繋がる増殖および浸潤のメカニズムを解明して、AQP1が新たな治療ターゲットとなることを証明するものである。 先行研究において作成したヒトGBM細胞U251およびU87由来のAQP1発現調整細胞株を用いて実験を行った。GBM細胞株においてはAQP1発現量に相関して、腫瘍細胞の遊走能、浸潤能が亢進することを先行研究で明らかになっているが、細胞の遊走能、浸潤能に関与するmatrix metalloproteinase (MMP) -9活性およびCathepsin Bの発現がAQP1の発現量に相関することが明らかになった。AQP1の発現亢進はMMP-9活性およびCathepsin Bの増強を介し、遊走能、浸潤能亢進に関与していると考えられた。 また樹立したAQP1発現調整GBM細胞株とコントロール細胞株を用いてGeneChipを施行した。AQP1発現と相関関係を示す複数の候補因子に関して文献検索を用いてスクリーニングを行い、さらにPCR、Western blotting法にて、GeneChipの結果を検証したが、THSD7A以外に新たな候補因子の同定には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GeneChipで得られた結果から文献検索およびPCR、Western blotting法を用いて、GBM細胞株におけるAQP1の発現量と相関を示す候補因子を同定する計画であったが、いずれの候補因子もGeneChipで得られた結果をPCR、Western blotting法で再現するに至らず、候補因子の同定ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は平成31年度、令和元年度の結果から、GeneChipで得られた候補因子のうち、相関の上位ではない因子にも範囲を広げ文献検索を行うこととする。 また同時にmAQP1の発現と負の相関を示していたThrombospondin type I domain-containing 7A (THSD7A)に関しての検証を進めることとする。THSD7Aは血管内皮細胞に対しては血管新生促進を示し、さらには血管内皮細胞の正常な進展・誘導に寄与する可能性がある。コントロール群細胞株のTHSD7AをsiRNAにて発現抑制を行い、THSD7Aが血管新生に及ぼす影響を検討する。免疫不全マウス(SCID-NODマウス)の脳にAQP1発現調節腫瘍細胞株およびコントロー ル群を移植し、腫瘍体積や血管新生の程度を比較して、腫瘍細胞のAQP1発現量の変化による腫瘍形成の差をin vivoにおいても確認する。さらにAQP1阻害薬を投与して解糖系活性の評価および腫瘍の増殖能、遊走能、浸潤能、血管新生能に及ぼす影響を確認する。これまでAQP1阻害薬は塩化水銀のみが知られており、治療面においては現実的ではなかった。しかし近年新規のAQP1阻害薬が報告されるようになった。現在研究用として購入可能となったAQP1阻害剤(CVPA 10-1430, Focus Biomolecules)も存在し、治療への期待が高まっている。AQP1 阻害剤による悪性神経膠腫の増殖・浸潤・遊走・血管新生抑制効果を証明し、得られた結果を取りまとめ、成果を論文としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
GenChipの結果から候補因子を同定する予定であったが、同定に至らなかった。そのため当初より予定していた物品購入、消耗品が少なく済んだ。学会参加費、旅費も予定より少なく済んだ。
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