本研究では筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 治療に使用することを目的として改変された、ヒト間葉系幹細胞 (HAC-MSC)の移植後の生着効率の向上を目的として研究を行った。 HAC-MSCのマウス脳内への移植実験の結果から、移植後7日目においてクロドロン酸内包リポソーム投与群がコントロールと比較して有意に高い細胞由来の発光を示したが、最長生着期間の延長は認められなかった。このことから、短期的にはMΦ・マイクログリアの存在がHAC-MSCシートの生着に対して負に働く可能性が示された。 In Vitroにおけるマウス骨髄由来MΦと間葉系幹細胞の共培養実験の結果、HAC-MSCは同種同系のMSCと同様にMΦの細胞増殖を亢進させ、48時間以内に組織保護的とされるM2フェノタイプに誘導させ、組織障害的とされるM1フェノタイプにはほとんど誘導しなかった。トランスウェルアッセイの結果、HAC-MSCが同種同系由来のMSCを遜色ない誘引能を持つことが明らかとなり、In Vivoにおける細胞シート近傍へのMΦ・マイクログリアの集積と矛盾のない結果となった。しかし、一度HAC-MSCを移植したマウス由来の血清を含む共培養ではM1及びM2どちらに誘導させたMΦであってもHAC-MSCに対する貪食が亢進していた。この時、HAC-MSCの死細胞率は未移植と移植マウス由来の血清の間で差がなかったことから直接的なHAC-MSCの細胞死には影響しないことが示唆された。総合すると、HAC-MSC移植後に集積するMΦ・マイクログリアはHAC-MSC自体が引き寄せ、M2に誘導させることで間接的な組織保護的作用には期待できるものの、HAC-MSC自身の生着にとってはMΦ・マイクログリアの活性化フェノタイプの差は重要ではないと考えられる。 得られた成果はStem Cell Rearch & Therapy にて発表した。
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