研究課題/領域番号 |
19K18447
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
陰山 博人 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60461068)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / 羊膜由来幹細胞 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
我々は間葉系幹細胞(MSC)を用いた脊髄損傷後の後遺症治療の臨床応用を目指している。骨髄由来MSCを用いた治療は、その細胞源の確保・費用に大きな問題が存在する。羊膜はMSCを豊富に含み、採取にかかる侵襲も無いことからMSCの有望な細胞源である。 本研究では、マウス脊髄損傷モデルを用いて羊膜由来MSCによる神経機能改善を検討する。また、脊髄損傷後の神経機能改善効果およびそのメカニズムについて免疫反応を中心に解析する。本研究により治療法のない脊髄損傷後の後遺症に対する新たな治療を提案することができ、将来的な患者の予後改善に寄与できると考えられる。 本年後はモデルマウスの作成の標準化を行った。これにより先端0.2mmの鑷子を用い、その圧迫時間は30秒で脊髄損傷モデルを作成した。マウスは脊髄損傷を作成した24時間後に羊膜由来幹細胞を静脈投与したhAMSC群、脊髄損傷作成した24時間後に溶媒のみを投与したICH群の2群で比較した。評価として急性期(4週間以内)は週一回程度のBMS score、Basso, Beattie, Bresnahan (BBB) scoreによる運動機能評価、tactile sensory testingを用いた感覚評価を行い、亜急性期(4週間以降)は歩行解析ソフトで運動機能の詳細解析を行うこととした。BBBならびBMSscoreではhAMSC群の改善傾向があり、感覚では明らかな反応Task forceの改善を認めた。現在歩行解析で運動機能での相違がないか検討中である。 行動実験を終えたマウスより脊髄損傷部位を採取しており、まずは亜急性期の免疫染色で損傷程度の確認、炎症反応の相違を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
鑷子圧迫法によるモデルは安価に作成が可能であり、椎弓切除を最小限でできるため比較的低侵襲である。ただ、通常の鑷子を完全閉塞してモデルを作ると、多くの個体で完全下肢麻痺を起こし、機能改善が見込めない。よって、鑷子先端が0.2mmまたは0.5mm間隔が開くように、鑷子を自己改良した。0.5mm幅では、術後1週間程度で大部分症状が改善してしまうため、先端0.2mmの鑷子を用いた行動実験を行った。 マウスは脊髄損傷を作成した24時間後に羊膜由来幹細胞を静脈投与したhAMSC群、脊髄損傷作成した24時間後に溶媒のみを投与したICH群の2群で比較した。初回行動実験は先端0.2mmの鑷子で15秒間の圧迫でモデルを作成し、評価としてBasso Mouse Scale(BMS) scoreを用いた。4週間の経過でほぼ症状が回復してしまうため、細胞治療効果を見出すことが困難であった。よって2回めの行動実験は先端0.2mmの鑷子で30秒間の圧迫でモデルを作成し、評価として急性期(4週間以内)は週一回程度のBMS score、Basso, Beattie, Bresnahan (BBB) scoreによる運動機能評価、tactile sensory testingを用いた感覚評価を行い、亜急性期(4週間以降)は歩行解析ソフトで運動機能の詳細解析を行うこととした。BBBならびBMSscoreではhAMSC群の改善傾向があり、感覚では明らかな反応Task forceの改善を認めた。現在歩行解析で運動機能での相違がないか検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
継続して幹細胞の静脈投与での作用機序を検討する。具体的には時期を脊髄損傷後に羊膜幹細胞もしくは溶媒投与した後の24時間後、72時間後、7日後での損傷脊髄、肺、脾臓を取り出す。免疫染色にて、羊膜幹細胞の分布ならび炎症ならび抗炎症に寄与するマーカーの検索、軸索形成や瘢痕形成の評価を行う。また、同臓器からmRNAならび蛋白抽出を行い、PCR法やWestern blotting法でRNA発現や蛋白発現を探索する。フローサイトメトリーについては脳と同様の方法で解析に必要な細胞数が取れるか、予備実験で確認し、細胞数が少ない場合は同時解析する個体数を3個体で解析できるかを検討する。 間葉系幹細胞の静脈投与での研究がある程度進んだ段階で、静脈投与と局所投与との違いを行動実験で検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はモデルマウスの条件を検討することに時間を費やした。行動試験は脳卒中で使用できるバッテリーは使用できないため、文献からBMS scoreやBBB scoreを引用した。これらの行動試験は脳卒中等で使用する行動試験のように特別な機材が不要であり、低コストで施行できた。本年度は機序解析として免疫染色は開始しているが、Western blottingやフローサイトメトリー検査の本試験は行っていない。このため、Western blottingやフローサイトメトリー検査の消耗品に必要な費用がかからなかったため、30万ほどの余剰となった。しかし、次年度はこれらの実験の本試験を行うために使用を予定している。
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