研究実績の概要 |
我々がヒト臨床研究で投与している滑膜幹細胞は高い軟骨分化能を有し、膝関節内の他組織と発生学的に近似していることから異所性組織構築も認めず、臨床的に優れた細胞ソースである(Sekiya et al., Clin Orthop Relat Res. 473(7), 2015, Sekiya et al., Cell transplantation, 28(11):1445-1454, 2019)。本研究の目的は、この滑膜幹細胞の培養位相差像における細胞形態情報と、増殖性・分化能・遺伝子発現プロファイルなどの細胞生物学的な解析結果を統合したデータベースを構築し、再生医療技術の実用化における製造の安定性向上を試みることであると考えた。 2019年度は、滑膜幹細胞の主にコロニー性増殖に着目した解析を行い論文化した(Mizuno M, Sekiya I. et al., Scientific Reports, 9(1):16835, 2019.)。滑膜幹細胞はコロニー性増殖により高い軟骨分化能を維持した培養が可能である(Nakamura, Mizuno, et al, Jour of Orthopaedic Research, 2018)。そのため、培養過程の経時的な観察により細胞の品質管理が可能になると考え、先行して細胞位相差像を用いたコロニーの増殖曲線解析を行った。その結果、増殖性毎に各コロニーをクラスタリング分類し、機械学習における教師データの取得が可能となった。本研究課題において、これら各群における特性解析を行うことで、取得した形態等の情報が機能的にどのような意味を持つのか、細胞の機能解析と関連した解析を実現できる情報基盤を構築した。
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