研究実績の概要 |
我々がヒト臨床研究で投与している滑膜幹細胞は高い軟骨分化能を有し、膝関節内の他組織と発生学的に近似していることから異所性組織構築も認めず、臨床的に優れた細胞源である(Sekiya et al., Clin Orthop Relat Res. 473(7), 2015, Sekiya et al., Cell transplantation, 28(11):1445-1454, 2019)。本研究の目的は、滑膜幹細胞の培養位相差像における細胞形態情報と、増殖性・分化能・遺伝子発現プロファイルなどの細胞生物学的な解析結果を統合したデータベースを構築し、再生医療技術の実用化における製造の安定性向上を試みることである。 引き続き、様々な条件で細胞画像を取得し、解析を実施している。特に、当該年度では細胞培養時の変化を評価するため、細胞凍結後の細胞障害に着目し、その特性変化を観察・評価した。その結果、細胞凍結による障害と細胞の特性には関連があることが明らかとなった。凍結保護剤の影響により、細胞への障害を引き起こされるが、これは細胞膜の物理学的特性により細胞種ごとに相違が生じていることが示唆された。これらの成果を英語論文として取りまとめ、国際雑誌への投稿を行った。 また、過去の報告では増殖因子や炎症性サイトカインなどにより増殖性を高めることが報告されており、それら条件下では細胞形態が変化することが知られている。それらの相違を評価するため、増殖因子の添加や、培地組成を変更した条件で培養を行いその形態と特性について評価した。その結果、培地組成の変更により増殖性を高めるものの、形態に影響しない条件を見出すことができた。これにより、細胞の機能に介入せず増殖性のみ高めることができる可能性がある。実用化における利点、欠点を整理し、条件の検討を継続する。
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