研究課題
本研究の目的は前十字靭帯(ACL)再建術後の膝蓋下脂肪体(IFP)線維化に関わるバイオマーカーを探索し、ACL再建術の成績不良例の患者を早期に検出し、早期に介入を行うことで治療成績の向上を目指す。またバイオマーカーを見つけることでIFP線維化の発生機序を明らかにし、新たな治療法の開発に結び付くことを期待する。先行研究から我々はIFP線維化のマーカーとして術後の関節液中の炎症性サイトカインと免疫細胞に注目した。本研究にて以下の事象を明らかにする。「関節液中の炎症性サイトカイン、免疫細胞と術後3ヵ月のIFP 線維化の程度との関連」。現在ACL再建術患者の術後3日目の関節液を採取し、炎症性サイトカイン濃度をELISAで測定している。また術後3ヶ月でMRIを撮影しIFP線維化の評価をスコアリングシステムを用いて(Grade 0:なし-Grade5: 重度の線維化)で評価を行っている。臨床成績は術前と術後で機能評価としてLysholm score、また疼痛の評価として安静時、歩行時、階段昇降時の痛みをnumerical rating scale (NRS: 0-10)で評価を行っている。またCybexを用いた筋力測定を行い、ACL再建術の治療成績に大きな影響を及ぼす膝伸展・屈曲筋力を測定している。MRIによるIFP線維化のスコアリングシステムは既存のスコアリングシステムを改訂したものであり、妥当性の検討性が必要であり、2人の検者間の信頼性(ICC)を検討した。30例のMRIでICCは0.817(95%CI: 0.582-0.920)で過去の報告の評価として良好であり、本評価の妥当性が確認された。IFP線維化のスコアと炎症性サイトカインの濃度とPearsonの相関解析を行い関連があるか検討する。またIFP線維化とLysholm score、痛みのNRS、膝筋力の相関解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
患者のエントリーは進んでいる。術後の関節液を採取、保存し、適宜炎症性サイトカインを測定している。炎症性細胞のカウントについては条件検討中である。MRIによる膝蓋下脂肪体の評価方法は確立できたのでおおむね順調である。
当初の目標数に到達していないので患者のエントリーを継続し、データーを増やしていく。
患者のエントリー、関節液の解析が終了しておらず、結果として次年度に繰り越しとなったことで差額が生じている。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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