研究課題/領域番号 |
19K18454
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中川 裕介 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座助教 (60822666)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前十字靭帯再建術 / 膝蓋下脂肪体線維化 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は前十字靭帯(ACL)再建術後の膝蓋下脂肪体(IFP)線維化に関わるバイオマーカーを探索し、ACL再建術の成績不良例の患者を早期に検出し、早期に介入を行うことで治療成績の向上を目指す。またバイオマーカーを見つけることでIFP線維化の発生機序を明らかにし、新たな治療法の開発に結び付くことを期待する。先行研究から我々はIFP線維化のマーカーとして術後の関節液中の炎症性サイトカインと免疫細胞に注目した。本研究にて以下の事象を明らかにする。「関節液中の炎症性サイトカイン、免疫細胞と術後3ヵ月のIFP 線維化の程度との関連」。 現在ACL再建術患者の術後3日目の関節液を採取し、炎症性サイトカイン濃度をELISAで測定、免疫細胞の評価をFACSで行う。術後3ヶ月でMRIを撮影しIFP線維化の評価をスコアリングシステムを用いて(Grade 0:なし-Grade5: 重度の線維化)で評価を行う。臨床成績は術前と術後で機能評価としてLysholm score、また疼痛の評価として安静時、歩行時、階段昇降時の痛みをnumerical rating scale (NRS: 0-10)で評価、またCybexを用いた筋力測定を行い、膝伸展・屈曲筋力を測定している。 MRI評価と関節液の評価ができた36例で、IFP線維化のスコアが高い群(Grade 4-5)7例と低い群(Grade0-3)29例の2群に分けて検討した。IFP線維化のスコアが高い群では術後のLysholm scoreが有意に低く、階段昇降時の疼痛が有意に高かった。またIFP線維化スコアが高い群では膝伸展筋力の回復が線維化スコアが低い群と比べ不良であった。以上のことからACL再建術後患者でIFP線維化があることで、術後疼痛が遷延し、膝伸展筋力の回復が遅延するという悪影響が出ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
術後の関節液を採取、保存し、適宜炎症性サイトカインを測定している。炎症性細胞のカウントについては条件検討中である。 MRIによる膝蓋下脂肪体(IFP)線維化の評価方法は確立した。IFP線維化の程度と臨床成績に関連を示すことができたので、おおむね順調に進行しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
関節液中の炎症性サイトカイン、免疫細胞数の測定をすすめていく。 患者エントリーも継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
者のエントリー、関節液の解析が終了しておらず、結果として次年度に繰り越しとなったことで差額が生じている。
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