| 研究実績の概要 |
本研究の目的は前十字靭帯（ACL）再建術後の膝蓋下脂肪体（IFP）線維化に関わるバイオマーカーを探索し、ACL再建術の治療成績の向上を目指す。またバイオマーカーを見つけることでIFP線維化の発生機序を明らかにする。本研究の目的は「関節液中の炎症性サイトカインと術後3ヵ月のIFP 線維化の程度との関連及び臨床成績に与える影響」を明らかにすること。
ACL再建術患者の術後3日目の関節液を採取し、炎症性サイトカイン濃度をELISAで測定した。術後3ヶ月でMRIを撮影しIFP線維化の評価をスコアリングシステムを用いて（Grade 0：なし-Grade5: 重度の線維化）で評価を行う。臨床成績は術前と術後（3ヵ月、1年）で機能評価としてLysholm score、また疼痛の評価として安静時、歩行時、階段昇降時の痛みをnumerical rating scale (NRS: 0-10)で評価、またCybexを用いた筋力測定を行い、膝伸展・屈曲筋力を測定している。
MRI評価と関節液の評価ができた36例で、IFP線維化のスコアが高い群（Grade 4-5）7例と低い群（Grade0-3）29例の2群に分けて検討した。IFP線維化のスコアが高い群では術後3ヵ月のLysholm scoreが有意に低く、階段昇降時の疼痛が有意に高かった。またIFP線維化スコアが高い群では膝伸展筋力の回復が線維化スコアが低い群と比べ不良であった。
また本年度はさらに術後1年の臨床成績と線維化の程度の関連を比較したところ、術後1年時のLysholm scoreが線維化が高い群で低値であり、術後1年までも関節内線維化は臨床成績を悪化させることが示された。関節液中の炎症性サイトカイン濃度はIL-1β, IL-6, INF-γで線維化スコアが高い群で有意に高値であった。
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