変形性膝関節症(膝OA)の下肢アライメント内反化(O脚)は内反モーメントが直接的な内反化を引き起こす力学因子であるが、その内反モーメントは脛骨内側関節面傾斜に強く影響を受けていると想定される。内反モーメントを日常診療でルーティンに測定することは困難であるので、その結果として生じた荷重面水平化現象を捉えることで日常診療における膝OAのgrade評価や診断につながると考えられる。荷重面水平化現象は、究極的には二次元のX線で同定できる要因であると考えているが、それを証明するためには三次元評価で正確に水平化現象を証明し、運動との関連をみる必要がある。その上で、三次元から二次元に還元し、膝OAの進行度評価や早期診断、スクリーニングに用いることができるのではないかと考えている。まず独自開発ソフトである三次元アライメント測定システム(KneeCAS)を用いて、荷重状態での脛骨関節面の地面からみた傾斜を測定した。関節面はきれいな平面ではないため、凹凸のある平面を、独自の平面近似測定方法を用いて三次元的に平面を設定し、その平面を座標系の冠状面、矢状面に投影して非荷重、荷重状態での地面に対する傾斜をOA患者と健常高齢者で測定した。その結果、健常高齢者では冠状面より矢状面を中心として、地面に対して脛骨の水平化現象を認めた。一方で、膝OA患者では矢状面よりも冠状面でより大きな変化を示し、三次元的に地面に対して傾斜を認めた。我々の仮説である荷重時の脛骨関節面の水平化現象が、健常、膝OA患者の両者で証明され、膝OA患者では、冠状面でより顕著な水平化現象を示した。ついで、内反モーメントと荷重面水平化現象の相関を運動解析、三次元アライメント測定システム、三次元平面化手法を用いて証明した。2021年度は歩行時の骨運動を、より直接的に同定し、歩行時の荷重面水平化現象を証明することを課題とした。
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