研究課題/領域番号 |
19K18461
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
町野 正明 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (70807510)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 神経軸索 / 受容体型チロシンキナーゼ / ALK / 神経再生 |
研究実績の概要 |
神経系において特異的に発現の見られる受容体型チロシンキナーゼ(RTK)およびそれらのリガンドは、神経系の発生、分化、生存維持など多彩な生物学的機能を有している。未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)はRTKの1つであり、特定の神経細胞集団に対して増殖、生存維持などの作用を持つ受容体として機能するとされるが、詳しい機能はいまだ不明である。本研究の目的はALKの神経軸索に対する役割を解明することである。神経軸索伸長におけるALKの役割を解明することは、神経軸索障害の治療開発の礎となる。またALKのリガンドを特定し、ALKの活性化により引き起こされるシグナル伝達経路の解析および細胞レベルでのALKの機能解析を行う。本研究の独自性(創造性)はALKのリガンドを特定し、神経軸索に対する作用を解明することである。神経軸索再生におけるALKの役割を分子生物学的、生化学的手法を用いて解析する。 ALK阻害剤であるASP3026とアゴニストであるモノクロナール抗体(mAb16-39)をHEK293T細胞株に投与しリン酸化ALKの発現を免疫染色とWestern blotting法にて確認した。DRGニューロンにASP3026とmAb16-39を投与し神経軸索長と神経sproutingを定量的に評価した。N2a細胞株にsiRNAを用いたALKのknock downを行い、qRT-PCRにてALKのmRNAを確認した。ALKのKnock down有無によるDRGニューロンの神経軸索長とsproutingを比較検討した。当研究室では予備的な実験により、ASP3026投与にて濃度依存性にリン酸化ALKの発現は低下し神経軸索伸長とsproutingは抑制されることを確認した。またmAb16-39投与にてALKの発現は上昇し神経軸索伸長とsproutingは亢進することも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALKの中枢神経における発生学的な発現を確認するためにC57BL/6Jマウス全脳におけるmRNA発現を胎児期から出生後まで測定した。またマウス後根神経節DRG(dorsal root ganglion)から抽出した初代培養ニューロンを用いて神経軸索におけるリン酸化ALKの発現箇所を免疫染色にて観察した。ALKの発生学的な発現は出生直後がピークであり、神経軸索成長円錐尖端でリン酸化ALKの発現が亢進することを確認できた。ALK阻害剤であるASP3026とアゴニストであるモノクロナール抗体(mAb16-39)をHEK293T細胞株に投与しリン酸化ALKの発現を免疫染色とWestern blotting法にて確認した。DRGニューロンにASP3026とmAb16-39を投与し神経軸索長と神経sproutingを定量的に評価した。N2a細胞株にsiRNAを用いたALKのknock downを行い、qRT-PCRにてALKのmRNAを確認した。ALKのKnock down有無によるDRGニューロンの神経軸索長とsproutingを比較検討した。ASP3026投与にて濃度依存性にリン酸化ALKの発現は低下し神経軸索伸長とsproutingは抑制されることを確認できた。またmAb16-39投与にてALKの発現は上昇し神経軸索伸長とsproutingは亢進することも確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
表面プラズモン共鳴(SPR)・質量分析計を用いて精度の高いターゲットの捕捉を狙う。リガンド 候補(コンドロイチン硫酸CS-A、CS-B、CS-C、CS-D、CS-E、ケラタン硫酸KS、へパラン硫酸HS) との相互作用を解析する。同定されたリガンド候補をHEK293T細胞株に投与しリン酸化ALKの発 現を免疫染色とWestern blotting法にて確認する。リガンド候補のコア蛋白を用いて同様の実験を行う。C57BL/6Jマウス後根神経節DRG(dorsal root ganglion)から抽出した初代培養ニューロンを用いて神経軸索伸長を投与群と非投与群にて定量的に比較検討する。また初代培養ニューロン軸索尖端におけるリン酸化ALKの発現を免疫染色にて観察する。 ALKと最も相互作用のあることが分かったプロテオグリカン(コア蛋白)であるBiglycanとDecorin 投与にて濃度依存性にリン酸化ALKの発現を確認する。コア蛋白投与群で神経軸索成長円錐尖端においてリン酸化ALKの発現が亢進するか検証する。コア蛋白投与群で神経軸索が伸長することが予想される。当研究室は予備実験にてCS-B(デルマタン硫酸)はALKに結合する新たなリガンドであり、ALKを活性化する機能を有することを確認している。デルマタン硫酸とそのコア蛋白はALKの活性化を誘導し軸索伸長に寄与しており、今後神経再生研究に応用できることが期待される。
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