神経系において特異的に発現の見られる受容体型チロシンキナーゼ(RTK)およびそれらのリガンドは、神経系の発生、分化、生存維持など多彩な生物学的機能を有している。未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)はRTKの1つであり、特定の神経細胞集団に対して増殖、生存維持などの作用を持つ受容体として機能するとされるが、詳しい機能はいまだ不明である。本研究の目的はALKの神経軸索に対する役割を解明することである。神経軸索伸長におけるALKの役割を解明することは、神経軸索障害の治療開発の礎となる。またALKのリガンドを特定し、ALKの活性化により引き起こされるシグナル伝達経路の解析および細胞レベルでのALKの機能解析を行う。本研究の独自性(創造性)はALKのリガンドを特定し、神経軸索に対する作用を解明することである。神経軸索再生におけるALKの役割を分子生物学的、生化学的手法を用いて解析する。 ALK阻害剤であるASP3026とアゴニストであるモノクロナール抗体(mAb16-39)をHEK293T細胞株に投与し、リン酸化ALKの発現を免疫染色とWestern blotting法にて確認した。DRGニューロンにASP3026とmAb16-39を投与し、神経軸索長と神経sproutingを定量的に評価した。N2a細胞株にsiRNAを用いたALKのknock downを行い、qRT-PCRにてALKのmRNAを確認した。ALKのKnock down有無によるDRGニューロンの神経軸索長とsproutingを比較検討した。当研究室では予備的な実験により、ASP3026投与にて濃度依存性にリン酸化ALKの発現は低下し神経軸索伸長とsproutingは抑制されることを確認した。またmAb16-39投与にてALKの発現は上昇し神経軸索伸長とsproutingは亢進することも確認した。
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