研究課題/領域番号 |
19K18464
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮崎 真吾 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (40824173)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | GDF6 / 椎間板変性 / 腰痛 / ラット / スキャフォールド |
研究実績の概要 |
椎間板変性や椎間板性疼痛に対して成長因子であるGrowth differentiation factor 6 (GDF6)に注目し、その投薬加療の可能性を見出すべく実験を行っている。本年は主に手術時に採取されたヒト椎間板髄核細胞を使用し、ヒト椎間板組織におけるGDF6の発現度を椎間板変性度別に比較し、ヒト椎間板細胞へのGDF6の投与効果をin vitro実験で検討することを目的とした。採取された髄核組織から蛋白を抽出しGDF6の蛋白量の発現を年齢、Pfirrmann分類による変性度別にウエスタンブロット(WB)法にて測定した。またGDF6のヒト椎間板細胞への投与効果を変性度別に検証するため、髄核細胞を単層培地にて培養した後、三次元培地(Tapered Soft Stencil for Cluster Culture)を使用して細胞外基質合成と炎症性サイトカインを免疫蛍光染色法とPCR法で測定した。結果としてGDF6の発現度は年齢、変性度が進むにつれ低下していた。免疫蛍光染色法ではPfirrmann分類Grade2、3のG群でC群と比較してコラーゲン(P=0.004)、アグリカン(P=0.01)の発現の亢進を認めたが、Grade4ではG群とC群間に差を認めなかった。PCR法でも同様、 Grade2、3のG群でC群と比較してコラーゲン(P=0.024),アグリカン(P=0.031)の発現亢進を認めたが、Grade4ではG群とC群間に発現の差を認めなかった。さらにPCR法ではGrade2、3のI群と比較してG+I群でIL6(P=0.016)、MMP3(P=0.038)、TNFα(P=0.014)について発現の低下を認めたが、Grade4ではI群とG+I群との間に差を認めなかった。これらにより加齢・変性により椎間板内のGDF6は減少することが判明した。また3次元培養下において若年で変性度の低い髄核細胞にGDF6を投与することで細胞外基質合成の発現を亢進させ、炎症性サイトカインの発現は低下させた。GDF6の髄核細胞に対するこれらの作用が椎間板変性を抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りヒト椎間板細胞を用いたin vitroでの実験は本年内に終了した。上記に示したようにGDF6による椎間板変性を抑制する可能性が過去の報告とも合わせさらに示唆された。現在アテロコラーゲンを併用したGDF6の椎間板内投与による椎間板変性・椎間板性疼痛に対する効果をラット尾椎椎間板穿刺モデルを用いたin vivo実験で検討している。
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今後の研究の推進方策 |
スキャフォールド(アテロコラーゲンや徐放ゲルなど)を併用したGDF6の椎間板内投与による椎間板変性・椎間板性疼痛に対する効果をラット尾椎椎間板穿刺モデルを用いたin vivo実験で検討する予定である。穿刺を行い軽-中程度変性させた椎間板を作成し、GDF6をスキャフォールドと併せて椎間板穿刺する。椎間板変性の程度評価項目として椎間板高(レントゲン)、椎間板変性度(MRI)、組織学的変化(safranin-O, H-E染色)などの椎間板構造解析を行い、さらに椎間板組織(髄核と線維輪)の細胞外基質合成、炎症性サイトカインなどの遺伝子発現をRT-PCR法にて、蛋白合成の解析を免疫組織学的染色やウェスタンブロッティング法にて行う。またアポトーシス(TUNEL法)に及ぼす影響の評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会出張(海外・国内を含む)が新型コロナ感染症の影響を受けて中止になった。その費用を使用することなく、来年度の出張の機会に持ち越す予定である。動物実験を中心に行うため当初の予定通り翌年度請求額は現状のままとする。
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