研究実績の概要 |
腰痛の主要因の一つである脊椎疾患は椎間板の変性に起因する所が大きい。しかしながら現状では椎間板変性に対する治療は確立されておらず、鎮痛剤などの投薬治療に加え、椎間板を切除して固定するなどの、本来の椎間板の機能を犠牲にした外科的治療に頼らざるを得ない。近年、椎間板変性に対し遺伝子導入、幹細胞移植、成長因子投与などの様々な生物学的療法が報告されているが、我々は成長因子であるGrowth differentiation factor 6 (GDF6)に注目した。本研究の目的は、GDF6の椎間板細胞、細胞外基質代謝に与える影響を検討し椎間板変性に対する投薬治療の可能性を見出すことである。初年度にはIn vitroでの実験を行った。腰椎変性疾患の手術時に採取した椎間板髄核組織検体(n=24,年齢15~70歳)から年齢とPfirrmann変性度別(GradeⅡ,Ⅲ,Ⅳ)のGDF6発現量をウエスタンブロット(WB法)で測定し,変性度別に分類した椎間板髄核細胞へのGDF6の投与効果を検証すべく、三次元培地を用い、三次元培養下に若年で変性度の低い髄核細胞ではGDF6の投与が細胞外基質の発現を亢進し、炎症性サイトカインを低下させたことを実証した。昨年度はin vivoでの実験を行った。我々がすでに確立しているラット尾椎椎間板モデルを使用した。連続するラット尾椎(C5/6-8/9)を20G針で穿刺して変性椎間板モデル(P群)を作製し、穿刺後アテロコラーゲン(AC)2μLのみを投与したA群、ACとGDF6 20μgを投与したG+AC群,、Control(C群)の4群で椎間板高の比較を行った。結果としてラット尾椎変性モデルではGDF6を投与することで椎間板高の低下が抑制された。これらからGDF6の椎間板髄核細胞保護作用が変性の抑制に繋がる可能性が示唆された。
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