研究課題
本研究では、未だ予後不良とされる骨軟部肉腫における腫瘍由来エクソソームを特定し、その膜表面タンパクの網羅的解析および検出技術を開発することにより、新規リキッドバイオプシー法を開発することを目的としている。初年度はエクソソームの抽出とその特定、および網羅的タンパク解析と候補分子の特定を行った。骨軟部肉腫細胞株および患者由来エクソソームの抽出・特定では、細胞株由来エクソソーム抽出は超遠心法、患者由来エクソソーム抽出はEVSecond法を用いた。抽出エクソソームは電子顕微鏡と粒子径を用い、サイズおよび形態、形状について確認した。サイズはいずれも50-200nmとエクソソームのサイズとして矛盾せず、また球状の脂質二重膜を持つことが確認できた。また、western blot、ELISAでエクソソームに特徴的なテトラスパニン(CD9、CD63、CD81)の発現を検証した。いずれのエクソソームにもテトラスパニンの発現が確認できた。抽出エクソソームの網羅的タンパク解析と候補分子特定では、抽出したエクソソームに対し、液体クロマトグラフィー質量分析法にてプロテオーム解析を行った。同様の手法で健常者由来エクソソームや正常株培養上清由来エクソソームをネガティブコントロールとして用いることで候補タンパクについて絞り込みを行った。健常者と比較し悪性骨軟部肉腫で発現が多く、また術前と比較し術後に発現低下がみられた候補タンパクの選定を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り計画が進んでいる。
2年目は特定した候補分子の臨床検体および細胞株においてその発現と機能検証を行う。治療経過に沿った抽出分子の検証では、骨軟部肉腫患者由来エクソソームの術前・術後・再発時・化学療法の前後など、経時的な候補タンパクの発現量の変化の有無を確認する。また、健常者等の血中発現量とも比較検討し、バイオマーカーとしての有用性を検証する。抽出タンパクの細胞株における発現・機能解析では、抽出タンパクの骨軟部肉腫細胞株における発現を解析し、その機能を確認する。機能解析においては発現抑制株を作成し、増殖能・遊走能・浸潤能・薬剤感受性を正常株と比較する。候補タンパクと融合遺伝子タイプとの関連性も評価する。3年目はin vivoでの検証およびExoScreen法を用いた検討を行う。動物個体を用いた抽出分子の診断・治療標的としての意義の検証では、骨軟部肉腫細胞株をnude mouseに移植し、腫瘍増殖および外科的切除に伴い候補分子を標的としたエクソソーム検出を行い、診断能を明らかにする。また候補分子発現抑制株との腫瘍形成・増殖能を比較し、治療標的としての意義を検討する。ExoScreen法におけるエクソソーム検出と臨床病理学的意義の検討では、骨軟部肉腫患者の血液をもとに化学療法前後、術前後等で解析し、治療モニタリングの手段としての可能性を検証する。
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