研究実績の概要 |
研究1:カーボンナノチューブ糸で構成された人工神経の末梢神経再生促進効果を明らかにする a.人工神経内腔充填材料としての可能性: シリコンチューブのみ移植したコントロール群とシリコンチューブ内に占めるCNT糸の占拠率を変化させた4群(0%, 2%,5%,10%, 35%)を作製した(N=7).術後8週の評価では電気生理学的検査にて2%群で85.7%,5%群85.7%,10%群42.9%に神経電位が観察された.コントロール群と35%群では全例で電位が観察されなかった.下腿筋湿重量においてもコントロール群と比較して2,5,10%では有意に筋湿重量が増加していた.組織学的評価ではCNT糸充填群では全例で神経欠損部が再生組織で架橋されており,CNT糸に沿った軸索の伸長を認めた.軸索伸長は2%群で最も効率が良く,85%の軸索再生を認めた. b.導管型人工神経としての可能性: 生体吸収素材で作成された人工神経管の導管内にカーボンナノチューブの線維を充填した人工神経モデルを作成。ラット坐骨神経欠損のモデルへ移植し、末梢神経の再生効果を評価した。生体吸収素材の導管では晩期の絞扼性神経障害の危険性は少ないが、神経再生を促進する効果はなかった。 研究2:コラーゲン/ラミニンコートによるカーボンナノチューブ人工神経のさらなる神経再生効果を探索する: コラーゲン/ラミニンコートは生成,滅菌などにおいて技術的に難易度が高いことから,当初の予定を変更した.カーボンナノチューブにオゾン処理及び強酸処理を行い、親水化させ生体適合性を増し,組織再生効果を高める試みを行った。親水化カーボンナノチューブを人工神経に用いることで、末梢神経の軸索伸長は促進された。また異物反応を評価すると、親水化カーボンナノチューブは未処理カーボンナノチューブよりも再生組織周囲のマクロファージの発現が少ない傾向にあることが分かった。
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