研究実績の概要 |
まず最初の研究としてカーボンナノチューブ(CNT)の人工神経管の材料としての可能性を探索するために,シリコンチューブのみ移植したコントロール群とシリコンチューブ内に占めるCNT糸の占拠率を変化させた4群(0%, 2%,5%,10%, 35%)を作製した(N=7).術後8週の評価では電気生理学的検査にて2%群で4/7匹(57%),5%群5/7(71%),10%群3/7(43%)に神経電位が観察された.コントロール群と35%群では全例で電位が観察されなかった.下腿筋湿重量においてもコントロール群と比較して2,5,10%では有意差に腓腹筋湿重量が増加していた.組織学的評価ではコントロール群では全例で神経欠損部の連続性を欠いていたが,CNT糸充填群では全例で神経欠損部が再生組織で架橋されており,CNT糸に沿った軸索の伸長を認めた.軸索伸長は5%群で最も効率が良く,85%の軸索再生を認めた.上記結果は英文雑誌Scientific Reportsへ掲載された. 次にCNTを化学修飾により親水化させ生体適合性を増し,組織再生効果を高める試みを行った.これらの化学修飾によりCNTの親水度が未処理のものと比較し1.2から1.5倍となったことが確認できた.in vivo研究にて親水化CNTで作成した線維をラット坐骨神15㎜欠損モデルに移植し術後8週にて評価したところ,CNTの親水度が高くなるにつれて神経再生が促進されることが組織学的評価,電気生理学的評価にて確認された.また異物反応を評価するため、移植素材周囲のマクロファージの発現を観察したところ,8週の時点で親水化CNTは未処理CNTよりもマクロファージの発現が少ない傾向にあることが分かった。以上の結果をもって論文発表準備を進めている。
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