研究課題/領域番号 |
19K18469
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
樋田 真理子 大分大学, 医学部, 客員研究員 (10737224)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | コラーゲン / 転写 / 骨 / 軟骨 |
研究実績の概要 |
細胞外マトリックスは、発生過程や再生に伴う組織形成、機能発現において重要な役割を担っている。 中でも主要構成成分である線維性コラーゲン分子は、骨や軟骨など組織特異的に発現しており、骨格形成に深く関与していることから、転写や翻訳といった発現調節機構の解析を行い、その分子メカニズムの解明につなげたい。 現在までに、軟骨細胞では、XI型及びXXVII型コラーゲン遺伝子の発現調節機構であるプロモーターやシスエレメントに関して解析を行ってきた。シスエレメントに着目すると、XI型及びXXVII型コラーゲンの両遺伝子で軟骨特異的な領域が見出されたことから、そのエンハンサー領域に関与する転写因子を同定するため引き続き解析を進めている。また、XI型コラーゲン遺伝子に関しては、エンハンサー領域近傍に位置するサイレンサー領域についても関与する転写因子の同定に向け解析を進めている。 一方、骨特異的に発現するV型及びXXIV型コラーゲン遺伝子については、V型コラーゲン遺伝子が骨形成部位に発現し、骨分化誘導因子であるSp7/Osterixによって増強されることや、XXIV型コラーゲン遺伝子がトランスジェニックマウス解析によって下顎骨において弱いシグナルを示すことなどが明らかとなっている。今後は、その生体内での作用機序や骨芽細胞における網羅的スクリーニング法等によって骨特異的シスエレメント領域や関与する転写因子の同定を行い、さらなる骨特異的な発現調節機構の解明を目指していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
XI型及びXXVII型コラーゲン遺伝子について、シスエレメントにおける活性や抑制に関与する転写因子を明らかにするため、これまでに欠失や変異、長さの異なるルシフェラーゼコンストラクトを組み合わせたルシフェラーゼアッセイ・EMSA等で領域を絞り込み解析を進めてきた。しかしながら、関与する因子の特定に時間を要していることから、各調節因子が分化過程に及ぼす影響や骨格形成異常症といった疾患との関連性についての検証にも時間を要する見込みである。 また、V型及びXXIV型コラーゲン遺伝子についても、骨特異的な発現調節機構を明らかにするため、骨プロモーター解析のほか、microRNA、long ncRNA解析といった複数の実験系によって解析を試みる予定であるため時間を要する。以上のことより進捗状況は、やや遅れていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
XI型及びXXVII型コラーゲン遺伝子のシスエレメントについては、軟骨特異的なエンハンサー領域や近傍に位置するサイレンサー領域に関与する因子を、引き続きバイオインフォマティクスや転写因子スクリーニング法等を利用して検討を行う予定である。 また、骨特異的発現調節機構については、骨分化誘導因子によって発現が増強されることから、エレクトロポーレーション法等によって生体内での骨特異的発現調節機構の解析を進める予定である。さらに遺伝子発現調節機構におけるRNAの新機能であるトランスクリプトームについては、骨芽細胞における骨特異的コラーゲン分子の発現にmicroRNAが関与する予備データを得ていることから、骨格形成に関与する各コラーゲン分子がどのように相互作用しているのかそのメカニズムについてもあわせて検証を試みる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
各コラーゲン遺伝子(V/XI/XXIV/XXVII型コラーゲン)の発現調節機構を解析するため、細胞培養実験(トランスフェクション及びルシフェラーゼアッセイ)に関わる費用、不随する試薬・器具・機器等の購入費用のため、また生体内での機能解析を進めるため、動物実験に関わる費用(トランスジェニックマウス作製等)として次年度使用するため予算を繰り越すこととした。 また、組織特異的な転写因子と複合体を形成し発現を調整する各コラーゲン遺伝子のlong ncRNA等の関与についてマイクロアレイや次世代シーケンスを用いての検証が想定されるため予算を繰り越すこととした。 引き続き解析を進め、骨や軟骨といった組織特異的なコラーゲン遺伝子の発現調節機構を明らかにすることによって、骨格形成異常疾患等の治療や組織再生へ応用できるように努めたい。
|