研究実績の概要 |
High mobility group box2 (HMGB2) KOマウス骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)は脂肪分化能が著しく低下し、逆に骨分化は促進される。HMGB2 発現抑制によりMSCのβ-catenin発現量は細胞質・核内で増加し、その促進因子であるDvl-1, pGSK-3βの発現もHMGB2 KOにより増加していた。HMGB2はMSCの骨または脂肪への分化方向性を調節するβ-catenin発現に抑制的に作用していることが示された。また、H2O2による酸化ストレスに対して、細胞生存率はKO MSCがWT細胞より高く、NRF2の発現, SOD活性も高いため、HMGB2発現抑制による抗酸化ストレス能上昇が示された。 オスWT, HMGB2 KOマウスを飼育し、2, 6, 12か月齢で腓腹筋の比較を行った。筋重量/体重比及び、速筋繊維量がKOマウスで高く、脂肪分化転写因子の発現量は少なかった。 さらに、脛骨神経断裂モデルにおいて、4か月後まで腓腹筋を観察した。WTマウスでは早期に脂肪分化転写因子、筋内異所性脂肪誘導の重要な因子であるPDGFRαの発現が増え、4か月時点で異所性脂肪浸潤を多く認めた。一方、KOマウス筋内ではNRF2の発現、β-cateninの核内移行が亢進し、脂肪分化誘導因子の発現は著明に低く、脂肪浸潤も少なかった。モデルマウスにおいてMuRF1の発現はWT/KOで筋委縮誘導因子の発現に有意な差は無かったが、筋重量/体重比もKOマウスで高値であった。 加齢、除神経に対して、HMGB2発現抑制により抗酸化ストレス能上昇、Wnt/β-catenin経路の活性化により、骨格筋への異所性脂肪浸潤が抑制された。加齢性筋減少症-サルコペニアにおいては、速筋繊維を主とした骨格筋量減少に加えて骨格筋の質が重要であり、HMGB2がそれらの治療標的となる可能性が示された。
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