研究課題/領域番号 |
19K18480
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
高藤 義正 近畿大学, 医学部, 助教 (90734864)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エクソソーム / miRNA / 筋・骨・血管連関 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、骨格筋が分泌するエクソソーム(Myo-exo)に着目し、筋・骨・血管連関におけるMyo-exoの生理的あるいは骨粗鬆症病態における役割の解明を目指して実施している。 1年目の2019年度は、Myo-exoをマウス筋芽細胞株(C2C12細胞)の培養上清から超遠心法にて単離し、in vitroの検討を実施した。骨吸収を司る破骨細胞分化へのMyo-exoの影響を検証した結果、Myo-exoは骨髄細胞から破骨細胞への分化を濃度依存的に抑制し、破骨細胞分化関連遺伝子の発現を有意に抑制し、破骨細胞への分化過程で上昇するミトコンドリア活性も有意に抑制した。 一方、血管への作用を検証するため、マウス血管平滑筋細胞株(MOVAS細胞)にMyo-exoを添加し、石灰化誘導培地で培養した後、石灰化関連遺伝子の発現を解析したが、有意な変動は認められなかった。 骨格筋は運動や代謝状態によってその機能が変化することが知られていることから、振盪培養によって筋芽細胞にメカニカルストレスを負荷し、この際に産生されるエクソソーム(Myo-exo-stress)を単離した。Myo-exo-stressは、Myo-exoよりも破骨細胞分化抑制作用が高く、メカニカルストレスの負荷がMyo-exoの作用を増強する可能性が示された。 次に、Myo-exo、Myo-exo-stressの内包物を抽出し、miRNAシークエンス解析を行った。骨芽細胞や骨髄細胞における発現が低く、Myo-exoおよびMyo-exo-stressにおける発現が高いmiRNAを候補因子として抽出し、現在その生理作用の検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、in vitro実験にて、Myo-exoの骨、血管への作用を検証した。その結果、Myo-exoが破骨細胞の分化、成熟に抑制的に作用するという新しい知見を得た。一方で、血管平滑筋細胞へのMyo-exoの作用が認められなかったことから、今後の研究はMyo-exoの骨代謝活性への作用に焦点を絞って進めることとした。 また、申請書では、筋芽細胞への刺激がMyo-exoの作用に及ぼす影響について検証することを計画していたが、様々な検討の結果、筋芽細胞へのメカニカルストレス負荷がMyo-exoの破骨細胞抑制作用を増強するという新しい知見が得られた。 申請書ではRNAシークエンス解析による責任因子の探索を予定しており、実際にMyo-exoに内包されるmiRNAに着目したシークエンス解析を行うことで、Myo-exo中の有効成分の候補因子となるmiRNAの絞り込みに成功した。 以上のことから、当初予定していた実験計画は概ね予定通りに実施でき、いくつかの新しい知見が成果として得られたことから、研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる2020年度は、Myo-exoのin vivoでの骨修復、骨再生能を評価する。具体的には、マウス頭蓋骨や大腿骨に欠損を作製し、足場材料と共にMyo-exoを移植し、CT装置を用いて経時的に骨修復過程を解析すると共に、骨組織切片を作製し、TRAP、ALP、TUNEL染色によって骨表面における骨芽細胞、破骨細胞、アポトーシス細胞数を解析する。 また、グルココルチコイド投与や、坐骨神経切除下肢不動化による骨粗鬆症モデルマウスを作製し、各Myo-exoを尾静脈から投与する。CT装置を用いて皮質骨、海綿骨密度を経時的に解析し、骨組織における骨芽細胞分化関連因子、破骨細胞分化/分化抑制因子の発現を解析すると共に、血漿中の骨代謝マーカー値を経時的に測定する。 さらに、1年目に解析したMyo-exo中に内包されるmiRNAの中から、実際にMyo-exoの生理作用を担う因子を同定するため、人工RNA(miRNA mimic、miRNA inhibitor)を細胞へ導入し、その作用を検証する。 これらの検証によって、Myo-exoの生理作用と病態における役割を解明し、責任因子の関与を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に参加予定であった国内学会が新型コロナウイルスのため中止となり、想定してた旅費が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。2020年度の実験に関する物品費として使用する予定である。
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