研究課題/領域番号 |
19K18481
|
研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
伊村 慶紀 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 整形外科医長 (40772687)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 骨肉腫 / 淡明細胞肉腫 |
研究実績の概要 |
マウス骨肉腫高肺転移細胞株LM8においてPhospho-RTK arrayによりPDGFRαの著明な活性化が認められた。Multiple Tyrosine Kinase InhibitorであるTAS-115は濃度依存的にPDGFRαとその下流のAktのリン酸化を阻害し、LM8の細胞増殖を抑制した。In vivoにおいてもTAS-115投与群で原発巣と肺転移巣の腫瘤増大抑制効果が認められた。原発巣と肺転移巣のlysateを用いたPhospho-RTK arrayではPDGFRαのみならずAXLやFLT-3の活性化が認められ、それらはTAS-115投与群で抑制されていた。TAS-115はLM8に対してPDGFRα, AXL, FLT-3シグナルの不活化を介して抗腫瘍効果を発揮している可能性が示唆され、今後TAS-115は骨肉腫の有効な新規治療薬となり得る。ヒト淡明細胞肉腫細胞株であるHewga-CCS, MP-CCS-SY, KAS, SU-CCS1の計4株ではMETが発現しており、そのうちHewga-CCS, MP-CCS-SYにおいてはMETのリガンドであるHGFの発現およびMETの活性化が認められた。他の2株ではHGFは検出されず、METの活性化は微弱であった。HGFを発現している2株においてMET阻害剤投与により細胞増殖抑制効果およびG0/G1期でのcell cycle arrestが観察された。In vivoにおいてもin vitroの結果と同様にHGFを発現しているHewga-CCSではMET阻害剤投与による腫瘤増大抑制効果を認めたが、発現していないKASでは明らかな抑制効果を認めなかった。淡明細胞肉腫においてHGFのautocrine的な作用がMETシグナルの活性化に寄与している可能性があり、HGFの発現がMET阻害剤の感受性に相関しているものと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在まで骨肉腫と淡明細胞肉腫に関して、肉腫細胞株を用いて活性化している受容体をPhospho-RTK arrayにより網羅的に調べた。そして、Aktなどの下流シグナルの活性化に寄与しているか否かを確認し、それらを標的とした分子標的治療による抗腫瘍効果をin vitro, in vivo双方において検討してきた。ただ、受容体の活性化のメカニズムや分子標的治療の効果を予知するバイオマーカーの解析はまだ不十分である。また、これら以外の組織型の骨軟部肉腫においても同様に解析を進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
ウエスタンブロット法や免疫組織化学染色法による各々の受容体、そのリガンド、リン酸化受容体のタンパク発現解析、ELISA法による血中リガンド量測定が分子標的治療の効果を予知するバイオマーカーとなり得るかを検討する。また、他の組織型の骨軟部肉腫においても同様の手法を用いて、細胞株における活性化受容体やその下流シグナルを同定し、in vitro, in vivoにおいてその受容体を標的とした分子標的治療による抗腫瘍効果を評価していく予定である。そして、我々が実際に手術等で採取した骨軟部肉腫症例の腫瘍組織においても細胞株と同様の受容体、リガンド、リン酸化受容体が発現しているかを検討し、予後との相関などを調査していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、肉腫の受容体活性化のメカニズムや分子標的治療薬の抗腫瘍効果を予知するバイオマーカーの解析において遅れが生じており、それらにかかる必要物品の購入が計画より遅れていることが挙げられる。必要物品としては、具体的には免疫組織化学染色法やウエスタンブロット法に使用する抗体や受容体やリガンドをノックダウンするsiRNAなどである。今年度の使用計画としては、遅れが生じている受容体活性化のメカニズムの解析やバイオマーカー探索を進めるために必要な物品費等に使用する予定である。
|