研究実績の概要 |
本年度の研究として、主に手術時に採取したヒト後縦靭帯骨化(OPLL)・黄色靱帯骨化(OYL)標本およびttwマウス頚椎を用いた免疫染色をおこなった。ヒト脊柱靱帯骨化組織については、OPLLもしくはOYL患者の黄色靭帯を用いて正常黄色靭帯組織との発現比較を行うとともに、ttwマウス頚椎を経時的に免疫染色にて評価した。評価対象としてSTK38L,RSPO2,HAO1,CCDC91,RSPH9などの疾患関連候補遺伝子やRunx2、Sox9などの骨化関連転写因子、幹細胞マーカーなどを免疫染色を用いてその局在などを評価した。 ヒト靭帯骨化標本では、骨化前線周囲でRSPO2、骨化初期の前肥大軟骨細胞層でHAO1, CCDC91陽性細胞を認めた。非靭帯骨化標本ではこれらの発現はみられなかった。また線維軟骨細胞層においてRSPO2陽性細胞が多数みられ、同部位はSox9、CD90陽性細胞の発現がみられ、Runx2陽性細胞はみられなかった。ttwマウス頚椎では、主に若年の3~6週齢のマウスにおいてPLLの付着部でHAO1、RSPO2が発現する標本がみられたが、それら2つが同一標本で陽性となることはなかった。RSPO2陽性細胞が多くみられる領域において、Sox9陽性細胞が多数みられ、Runx2、CD90陽性細胞はみられなかった。 ヒトOPLL標本では、非骨化軟骨細胞領域において軟骨分化の促進およびRSPO2発現がみられた。またttwマウスでも靭帯付着部の未骨化時期において同様の所見がみられ、疾患関連候補遺伝子が骨化初期の軟骨細胞分化に主に関与する可能性が示唆された。特にRSPO2の骨化初期の軟骨細胞分化への影響が大きいのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
靭帯骨化症における疾患関連候補遺伝子の発現やmechanical stressの影響、靭帯骨化症モデルマウスのttwマウスにおける遺伝子の経時的変化などの結果から、当初目的としていた研究の実験、結果解析は大方の進捗がみられた。これらの結果を、2019年度は第48回日本脊椎脊髄病学会(4月18~20日、横浜)および厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「脊柱靭帯骨化症研究班」の研究班ミーティング(第1回7月6日、第2回11月30日)にて報告した。 また、今回の研究の内容について英文論文投稿を現在行っている(Nakajima H, Watanabe S, et al. Expression analysis of susceptibility genes for ossification of the posterior longitudinal ligament (OPLL) of the cervical spine in human OPLL-related tissues and a spinal hyperostotic mouse (ttw/ttw))。
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