研究課題/領域番号 |
19K18496
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 望人 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (30826748)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / 軟骨変性モデル / DMM手術 / ADMA10 |
研究実績の概要 |
我々は変形性関節症の原因となる軟骨変性を評価するため、実験計画書をもとに膝関節内側板半月板切除するDMM(Destabilization of the medical meniscus)手技を用いて軟骨変性モデル(in vivoモデル)を作製した。コンディショナルノックアウトマウス作製およびDMM手術手技習得のために6か月程度の時間を要した。軟骨特異的ノックアウトマウス(CKOマウス)としてCol2a1-cre;ADAM10fl/fl、正常マウス(Wildマウス)としてADAMfl/flに対して、生後8週時点でDMM手術を実施した。術後6週および10週時点でSacrificeしたマウスの膝関節の切片に対してサフラニンO染色を行い、OARSIスコア(Furman BD, et al. J Orthop Res.2007)を用いて軟骨変性を評価した。CKOマウス/Wildマウスの術後6週モデルではOARSIスコア2.4/1.9、術後10週モデルでは6.1/14.2であった。CKOマウスはWildマウスと比較して、術後6週モデルでは有意差はないものの、術後10週モデルで有意に軟骨変性を抑制していたことがわかった(P<0.05)。Explant culture (ex vivoモデル)を行うため、CKOマウス/Wildマウス(生後4週)の大腿骨頭を採取し、IL-1αによる前処置を行った上、サフラニンO染色による組織染色を行った。WildマウスはCKOマウスと比較して、明らかにサフラニンO染色低下を認めた。以上のことより、現時点で予定している3つの軟骨変性モデルのうち、2つのモデルの結果の一部を確認し、ADMA10発現を抑制することで軟骨変性を抑える可能性が考えられ、今後の研究を進めていくことができると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画として①DMM model(in vivoモデル)②長期自然経過(in vivoモデル)③Explant culture(ex vivoモデル)の3つの軟骨変性モデルを樹立していた。DMM modelを作製するためのDMM手術手技習得にはラーニングカーブがあり、手技習得までにある程度時間を要することは予想しており、おおむね予定通りであった。長期自然経過モデルは長期的な成長過程が必要であるため、約1年以上の時間を要する。今回成長過程で予期せぬ死があったことで同ゲージに入れるマウス数が異なり、予定より必要マウス数が減ったため、再度同モデルを作製中である。現時点では2つの軟骨変性モデルを用いて、ADAM10発現を抑制することで軟骨変性を抑制できることを研究中であり、今後は我々がin vitroで確認したADAM10発現抑制によるCD44発現抑制についてもin vivo/ex vivoモデルでも確認し、そのメカニズムについても明らかにしていく必要がある。現時点では予定通り研究が進展しており、引き続き研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
変形性関節症の原因となる軟骨変性を評価するための実験計画として3つの軟骨変性モデルを作製し、軟骨変性について評価を行うこととしている。現時点ではすでにDMM手術による軟骨変性モデル(in vivoモデル)およびIL-1α刺激によるexplant culture (ex vivoモデル)を用いた組織学的評価を行ったため、今後はその切片を用いて軟骨変性に関与するバイオマーカーについて免疫組織染色やCT scanを用いた骨形態評価を行っていく予定である。また両群マウス(CKOマウス/Wildマウス)を12か月間、通常飼育した後、成長過程における軟骨変性を評価する長期自然経過モデル(in vivoモデル)を作製していき、同様に組織染色、免疫染色、骨形態評価を行っていく予定である。軟骨および軟骨以外(肝臓・筋肉など)の正常組織にADAM10がどの程度発現しているかについて、遺伝子発現レベル/蛋白レベルで評価していく。以上の結果を評価した後、すでに我々がin vitroで証明している軟骨変性によるCD44断片化亢進、およびADAM10発現を抑制することによるCD44断片化の抑制をin vivoで研究していく必要がある。計画している方法として、explant cultureによるex vivoモデルを用いて、大腿骨頭にIL-1α刺激を加えた後、メディウム中のCD44 fragment発現を蛋白レベルで確認することで、CD44断片化の有無について評価を行っていく。ADAM10発現を抑制することによる軟骨変性に関与しているCD44断片化抑制および変形性関節症モデルの軟骨変性抑制を明らかにすることで、変形性関節症の病態解明につがなり、今後の変形性関節症治療および予防につなげていくことができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究で長期自然経過モデルを作製した上で、免疫染色および骨形態測定を予定していた。しかし長期自然経過モデル作製において、マウスの成長段階で死亡により必要マウス数が減ってしまった。そのため再度モデル作製に時間を要し、次年度に免疫染色・骨形態測定等を予定している。
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