研究課題
軟骨変性には様々な因子が関与しており、病因および病態で明らかになっていないことが多くある。変形性関節症の病態を明らかにするため、我々は過去にin vitroにて軟骨変性とADAM10の関連について報告してきた。実験計画書をもとに軟骨変性とADAM10の関連について、in vivoモデルを用いて研究を進めている。軟骨特異的ノックアウトマウス(CKOマウス)としてCol2a1- cre;ADAM10fl/fl、正常マウス(Wildマウス)としてADAMfl/flを用いて、軟骨変性モデル(in vivoモデル)作製のためDMM手術を実施した。CKOマウス/Wildマウスの術後6週モデルではOARSIスコア2.4/1.9、術後10週モデルでは6.1/14.2であった。CKOマウスはWildマウスと比較して、術後6週モデルでは有意差はないものの、術後10週モデルで有意に軟骨変性を抑制していたことがわかった(P<0.05)。生後4週時点での大腿骨頭を採取して、explant cultureによるex vivo研究を行った。2日間の前処置を行った上で、IL-1αによる24-72時間の刺激を加えて、軟骨変性を評価したところ、CKOマウスと比較してWildマウスは サフラニンO染色低下およびHypertrophic chondrocyteを認めた。これはin vivoモデルと同様にex vivoモデルでもADAM10は軟骨変性抑制に関与していることを示唆する所見であることがわかった。今後軟骨変性に関与しているヒアルロン酸レセプターであるCD44と、CD44断片化抑制に関与しているADAM10について解明していくことで、軟骨変性を引き起こすメカニズム解明の一助となると考えられる。
3: やや遅れている
理由としては、CreマウスであるCol2a1- creの繁殖が悪く、軟骨特異的ノックアウトマウス(CKOマウス) Col2a1- cre;ADAM10fl/fl作製が順調に進まなかった。そのためCKOマウスが実験計画予定数に達していないこととDMM手術の予定のタイミング(成長時期)が重なり、一時的に継代のみを行っている時期があった。研究実施計画では①DMM model(in vivoモデル)②長期自然経過(in vivoモデル)③Explant culture(ex vivoモデル)の3つの軟骨変性モデルを樹立している。本年度はExplant culture によるex vivoモデルを中心に実験を遂行し、サフラニンO染色では染色低下およびHypertrophic chondrocyteを認め、軟骨変性について示した。現時点において継代は通常通り行える状態までマウス数が増えたことから、DMM modelおよびex vivoモデルにおける免疫染色を行う計画を立てている。長期自然経過モデル(in vivoモデル)についても、免疫染色を行うため、CKOマウス数を揃えて準備を整えている。今後免疫染色を用いて軟骨分解酵素(MMP3,ADAM-TS4/5など)の評価を行っていく必要があると考えている。
軟骨変性の評価ための実験計画として3つの軟骨変性モデルの作製(①DMM model,②長期自然経過,③Explant culture)を計画している。今まで行ってきた実験として、DMM手術による軟骨変性モデル(in vivoモデル)およびIL-1α刺激によるexplant culture (ex vivoモデル)、長期自然経過(in vivoモデル)に対するサフラニンO染色による軟骨変性の評価である。いずれのモデルに関しても、ADAM10を軟骨特異的にノックアウトしたマウスでは軟骨変性抑制を示している。しかしCatabolic gene発現抑制に関しては免疫染色では示せていない。膝関節/大腿骨頭の両方を用いて、軟骨変性に関与するバイオマーカーについて免疫組織染色やCTscanを用いた骨形態評価を行っていく予定である。軟骨および軟骨以外(肝臓・筋肉など)の正常組織にADAM10がどの程度発現しているかについて、遺伝子発現レベル/蛋白レベルで評価していく必要があるため、今後実験計画を立てて遂行してく。以上の結果を評価した後、すでに我々がin vitroで証明している軟骨変性によるCD44断片化亢進、およびADAM10発現を抑制することによるCD44断片化の抑制についてin vivoでも解明していく必要がある。計画している方法として、explant cultureによるex vivoモデルを用いて、大腿骨頭にIL-1α刺激を加えた後、メディウム中のCD44 fragment発現を蛋白レベルで確認することで、CD44断片化の有無について評価を行っていく。ADAM10発現を抑制することによる軟骨変性に関与しているCD44断片化抑制および変形性関節症モデルの軟骨変性抑制を明らかにすることで、変形性関節症の病態解明につがなり、今後の変形性関節症治療および予防につなげていくことができると考えている。
本年度はExplant culture によるex vivoモデルを中心に実験を行っていた。DMMモデルや長期モデルの免疫染色の評価を行っていく予定であったが、繁殖不良により、一時的に継代を中心とする系統維持に多くの時間を割いたため、薬剤を使用する機会が少なかったと考えれる。今後免疫染色を中心とした実験を行っていく予定のため、抗体や免疫染色など多くの薬剤が必要となることが予想される。またADAM10発現が軟骨変性に関わるメカニズムについてもさらに究明していく必要がある。
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