軟部肉腫は筋肉・脂肪・神経などの軟部組織から発生する間葉系細胞由来の悪性腫瘍でその起源組織等から50以上の組織型が存在する。発生頻度は全悪性腫瘍の1%未満であり希少がんに分類される。また、約半数の症例で遠隔転移をきたすため集学的治療が必要とされるが化学療法の効果も限定的であり、最も有効とされる抗がん剤でも奏効率は30%程度しかない。希少がんであるため新規治療薬の開発は行われず他癌腫治療薬の適応拡大が唯一の新規治療薬獲得の機会となっている。本研究の目的は大阪大学骨軟部腫瘍グループで樹立した患者由来細胞株および動物モデルを用いて、大阪大学薬学部付属化合物ライブラリー・スクリーニングセンターの協力の元に天然抽出物を用いたハイスループットスクリーニングを行い軟部肉腫の新規治療薬開発を行うことである。昨年度までに淡明細胞肉腫株に比較的効果が高い薬剤Aをハイスループットスクリーニングで同定し、薬剤Aにより淡明細胞肉腫特異的融合遺伝子EWS-TAF1が抑制されることを確認した。 本年度は大阪大学独自のライブラリーである天然抽出物を使用しハイスループットスクリーニングを施行した。残念ながら顕著に抗腫瘍効果を示すコンパウンドは同定できなかった。比較的抑制効果の認めたコンパウンドの類似化合物5種類を追加で腫瘍細胞株に投与し抗腫瘍効果を確認したが抗腫瘍効果を確認できなかった。また前年度に同定した薬剤Aに投与による疾患特異的融合遺伝子EWS-ATF1抑制効果の原因としてプロモータ領域が抑制されていることが確認できた。
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