研究課題
サバイビンは、アポトーシスを抑制する因子であり、腫瘍細胞で発現が増加している。サバイビン2B(サバイビンのバリアントの一種、霊長類特異的)は、活動性の高い関節リウマチ滑膜(特に線維芽細胞)に多量に発現しており、細胞の増殖を促す役割を持つ。本研究では、関節リウマチの病態制御を最終目標とし、滑膜増殖のメカニズムの解明、増殖を抑制するための新規治療法の開発を目指している。関節リウマチ滑膜組織におけるサバイビンバリアントの発現・調節機構の解明のために、以下のような実験を行っている。(1)CRISPR/Cas9法によるゲノム編集:サバイビンバリアント特異的ノックアウト細胞の作製のため、sgRNAのデザインを行った。各種細胞への導入を試みており、細胞内導入法について検討を行っている最中であり、今後も検討を続けることとする。(2)転写調節に関する研究:関節リウマチ由来の滑膜線維芽細胞では、PDGFで刺激するとサバイビンの発現量が上昇することを繰り返し確認することができた。当初、リアルタイムPCRを用いた解析結果から、SP3という転写因子がその経路において重要ではないかと仮定し、実験を続けていた。しかしながら、由来となるヒト個体が変更すると結果が変わる場合が多く、SP3による制御は普遍的ではない可能性が示唆された。そのほかの転写因子の関与も考慮するため、今後はルシフェラーゼアッセイを用いてより再現性の高い結果を導きだせるように、解析を進めていく予定である。
3: やや遅れている
関節リウマチ滑膜の研究には、患者滑膜検体があることが望ましいが、COVID-19の影響で本邦での予定手術がほぼ中止となっているため、結果的に新規検体採取が困難となった。また、2020年3月下旬から、研究室においても世間一般と同様に自粛体制となったため、実験の進行も遅れている。今後もCOVID-19の状況によって、研究の遅れが予想される。
COVID-19の影響を考慮しつつ、可能な範囲での検討を行う。これまでの手術症例について、滑膜検体のパラフィンブロックが保管されているため、組織切片を用いた研究で不足分を補うことを計画している。また、患者検体によらない実験(CRISPR/Cas9法、ルシフェラーゼアッセイなど)については、従来の予定通り実験を行うこととするが、COVID-19の影響で研究室の使用が制限された場合には(実際に自粛中であるが)、進行が困難となる場合が予想される。自粛が再開した際には、すみやかに研究を開始する方針とする。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件)
Pathobiology
巻: - ページ: -
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