福島県南会津地方の地域在住住民を対象とした前向きコホート研究のデータを用いて、高齢者の身体機能を測定する試験が2年間の医療費の予測に有用であるか否かの縦断解析を行った。ベースラインでの参加者の開眼片足立ちテスト30秒維持の可否を要因として、開眼片足立ちテストに合格した参加者の医療費は、合格しなかった参加者よりも有意に低かった。この研究の結果より、地域在住の60歳以上の高齢者において、静的バランスの制限が、その後の高医療費と関連している事が示され、静的バランス能力の評価は、将来的に医療サービスを頻繁に利用するリスクの高い人を特定するのに有用である可能性が示唆された。(「Archives of Gerontology and Geriatrics」に発表) さらに、福島県只見町の50歳以上の地域在住住民を対象とした前向きコホート研究の付随データを用いて、高齢者の身体機能の一側面として表面化する矢状面バランスと健康アウトカムとしての疼痛特異的QOL尺度の詳細な関連性を検討した論文を「European Spine Journal」に発表した。3つの矢状面アライメント指標(Pelvic Tilt:PT、Pelvic Incidence minus Lumbar Lordosis:PI-LL、Sagittal Vertical Axis:SVA)とRDQに対する用量反応関係 のうち、PI-LLは特徴的な非線形関係を示した。特に、腰痛特異的QOLは、矢状面アライメント異常に対する代償機構が閾値(PI-LL=10°)を超えると急激に悪化する可能性が示された。この研究の成果によって、脊柱矢状面バランスや成人脊柱変形の正確な分類法や治療戦略の確立、ひいては健康アウトカムの予測のための貴重な知見が得られた。
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