研究課題/領域番号 |
19K18510
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
島崎 都 金沢医科大学, 医学部, 助教 (00440511)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨髄由来間葉系幹細胞 / RNA-sequencing / 遺伝子パスウェイ |
研究実績の概要 |
ステロイドパルス療法は、難治性自己免疫疾患の切り札的治療法である。しかし、大腿骨壊死という重大な副作用の危険を含み、その予防法の確立は現代医療における重要課題である。研究代表者は、ウサギステロイド誘発大腿骨壊死モデルを用い、骨髄由来間葉系組織幹細胞 bone marrow-derived mesenchymal stem cell (BM-MSC)の経静脈投与による骨壊死阻止を報告した。その臨床応用に向け、BM-MSCの大腿骨傷害部へのホーミングと傷害阻止に関わる分子機構の解明が緊急の研究課題となった。本研究では、BM-MSCの傷害部への集合(ホーミング)と傷害阻止に関わる遺伝子群を、遺伝子プロファイリングにより選別し、in vivoにおける遺伝子・蛋白発現解析と in vitroにおける遺伝子発現修飾実験で検証する。トランスクリプトーム(mRNA全体)の網羅的な解析が可能である RNA-sequencingが、ステロイド性大腿骨壊死の分子機構の解明とBM-MSCの作用機序の解明に加え、骨壊死の治療法の確立にも繋がるという着想に至った。研究代表者は、先行研究でステロイド誘発家兎骨壊死モデルを用い、骨髄由来間葉系組織幹細胞の経静脈全身投与(BM-MSC)による傷害部への集積と、骨壊死抑制効果を明らかにした。 本研究は、ステロイド誘発骨壊死阻止過程における、経静脈的に投与されたBM-MSCの傷害部へのホーミングと傷害部での骨壊死阻止に関わる分子機構の解明を目的とする。ステロイドパルス療法の安全な実施のための新たな治療法の確立に必須であるとともに、大きな謎であったステロイド誘発骨壊死機序の解明へのブレークスルとなる。既知遺伝子に加え、未知の発現領域遺伝子の網羅的解析が可能であるRNA-sequencingを用いることにより、BM-MSCが骨壊死の予防・修復に関連する想定外の遺伝子パスウェイが検出可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ステロイド誘発骨壊死阻止過程における、経静脈的に投与された骨髄由来間葉系組織幹細胞(BM-MSC)の傷害部へのホーミングと傷害部での骨壊死阻止に関わる分子機構の解明を目的とします。RNA-sequencingによるウサギステロイド誘発性骨壊死において BM-MSCの傷害部へのホーミングと傷害阻止に関わる遺伝子群を網羅的に解析する前に、今年度は、in vitroにおいてpre実験を行いました。マウス骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)にステロイド添加や低酸素下に置く細胞傷害性ストレスを24時間与えた培養液をマウス骨細胞の培養液に置換し、24時間同時にストレスを与えると、アポトーシス、ミトコンドリアの機能が保持され、酸化ストレスが抑えられるというデータを得られました。この結果は、MSCがストレス時に放出するサイトカイン等が細胞の傷害を抑える機能を持ち、細胞へのストレスに対して予防に働くことを示唆しています。 この結果を踏まえて今後は、in vivoで遺伝既知遺伝子に加え、未知の発現領域遺伝子の網羅的解析が可能であるRNA-sequencingを用いることにより、BM-MSCが骨壊死の予防・修復に関連する想定外の遺伝子パスウェイが検出したいと考えています。
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今後の研究の推進方策 |
間葉系幹細胞にステロイド添加や低酸素下に置く細胞傷害性ストレスを24時間与えた培養液をマウス骨細胞の培養液に置換し、24時間同時にストレスを与えると、アポトーシス、ミトコンドリアの機能が保持され、酸化ストレスが抑えられるというデータを得られました。この結果は、MSCがストレス時に放出するサイトカイン等が細胞の傷害を抑える機能を持ち、細胞へのストレスに対して予防に働くことを示唆しています。この結果を踏まえて今後は、in vivoでRNA-sequencingによるウサギステロイド誘発性骨壊死において BM-MSCの傷害部へのホーミングと傷害阻止に関わる遺伝子群を網羅的に解析を行います。 .①-④のウサギ大腿骨壊死モデルの作製 ①野生型(WT):ステロイド(-)・BM-MSC(-)②ステロイド誘発骨壊死モデル: ステロイド(+)・BM-MSC(-)③ステロイド誘発骨壊死予防モデル: ステロイドとBM-MSCを同時に投与する。 ④ステロイド誘発骨壊死治療モデル: ステロイド投与4日後にBM-MSCを投与する。 モデル①-④の大腿骨壊死部骨髄からtotal RNAの抽出を行う。シーケンシングで得られた配列データを公共データベースのヒトゲノム配列、およびRNAデータベースと比較し、各配列データが、どの遺伝子に由来しているかを解析し、特異的発現遺伝子抽出:サンプル間で遺伝子の発現量を比較し特異的に発現する遺伝子を同定する。
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