研究実績の概要 |
ステロイド誘発性大腿骨頭壊死の発症機序には酸化ストレスによるアポトーシスや血管内皮細胞の機能障害が注目されている。長時間,四肢を空気ターニケットで駆血すると再灌流後に筋損傷が誘導される。虚血プレコンディショニング(IPC)は虚血再灌流傷害に対する保護効果があることが知られている。しかし、骨格筋損傷に対するIPCの作用機序は明らかではない。本研究では、IPCが虚血再灌流傷害による骨格筋損傷を軽減させるメカニズムを、新生血管因子および炎症関連因子を用いて検討した。6か月齢のラットの後肢大腿に駆血圧を300mmHgで空気ターニケットを巻いた(IPC)。IPC(-)群は5分間の再灌流を挟んで2度,120分間の駆血をした後に再灌流した。一方,IPC(+)群は5分間の駆血と再灌流を3回行い、IPC(-)群と同様の駆血再灌流を行った。その後, それぞれの群で再灌流直後, 24時間後, 72時間後に腓腹筋を摘出した。炎症マーカーであるシクロオキシゲナーゼ2(COX-2), 血管新生因子(VEGF), 酸化ストレスマーカーである8OHdG、およびアポトーシス誘導因子を用いてタンパク発現解析を行った。アポトーシス定量解析にはTUNEL法を用いた。IPC(+)群はIPC(-)群と比較してVEGFの発現が保たれ, COX-2, 8OHdGの発現は抑制された。IPC(-)群はIPC(+)群と比較し,アポトーシス細胞数の割合が減少した。タンパク発現定量解析においてIPC(-)群と比較してIPC(+)群でBaxの発現が抑制された。骨格筋におけるIPCは, 血管新生因子を増殖させ, 炎症反応および酸化ストレスを抑制することが示された。IPCは、虚血再灌流後の筋損傷を軽減させる可能性が示唆された。
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