研究課題/領域番号 |
19K18513
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
塚本 学 産業医科大学, 医学部, 助教 (70778159)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / 肺気腫 / 酸化ストレス / 筋萎縮 / サルコペニア / ロコモティブシンドローム / 転倒 / 骨折 |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)はサルコペニアの危険因子である。COPDに伴う骨格筋障害は喫煙による外因性酸化ストレスと慢性炎症により生じる内因性酸化ストレスが病態に関与すると考えられているが明らかではない。先行研究においてエラスターゼ(PPE)誘導性肺気腫マウスでは骨量減少やI型筋線維萎縮が生じており、誘導された肺病変に伴う内因性酸化ストレスがその表現型に関与していると考えた。本モデル動物を用いて肺気腫と酸化ストレスと筋萎縮の関連を調査した。 C57BL/6J雄マウス12週齢に生理食塩水(Control群)またはPPE 0.1 U(PPE 0.1群)を気管内投与した。投与後0、1、2、3、4、8、12週時点の摂食量、飲水量、尿量、糞量を計測し、尿中8-OHdGも測定した。12週時点でμCTで肺を撮影し、%LAA (law attenuation area) で肺気腫を評価した。屠殺後には肺・筋組織中の8-OHdGを測定し、各下肢筋肉重量を計測した後に筋組織中のmRNA発現量を解析した。 摂食量、飲水量、尿量、糞量は、Control群とPPE0.1群の間に差はなかった。%LAAはPPE0.1群が有意に高値であった。尿中8-OHdGは投与後8週時点まで両群間に差はなく、12週時点でPPE 0.1群の尿中8-OHdGが有意に高値を示した。肺・筋組織中8-OHdGも有意に高値であり、各8-OHdGと%LAAは正の相関関係にあった。PPE 0.1群のヒラメ筋重量は有意に減少し、筋組織における酸化ストレス関連筋萎縮シグナル(MKK3/6、p38、FOXO1)が有意に上昇した。 PPE誘導性肺気腫マウスでは生体内の酸化ストレスマーカーが上昇し、筋組織中の酸化ストレス関連筋萎縮シグナルの活性化が生じていたため、COPDに伴う骨格筋萎縮に内因性酸化ストレスが関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた検証ポイントを確実に実施している。もう少し検証を進めていけば、本年度中に論文投稿が可能である。研究費が充実していれば、当初の計画以上に研究が進展していたと思われるが、当初の予定よりも酸化ストレスマーカー測定用の消耗品に多くの資金を費やしたため、他の検証ポイントに費やすべき資金が不足した。今後、効率的に研究を進めていくためには、もう少し研究費が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調に研究が進展しているため、当初の計画通りに研究を進めていく。新型コロナウイルス流行に伴い、動物研究センターが閉鎖された場合、研究が大幅に遅れる可能性がある。以下の対策を講じて、感染拡大予防に努めていく。 1) 体調不良者はセンターへ入館しない。2) 中止や延期が可能な研究については見送る。3) 入退館する際にはなるべく少人数とする。4) センター入退館時、動物飼育室入退室時に必ず消毒用アルコールで手指消毒を行う。5) 動物飼育室に入室する際には、マスク、帽子、手袋を着用する。6) 動物飼育室の入室は1名とし、飼育員や他の実験者がいる場合には、入室しない。7) 繁殖する動物数を必要最低限とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定だった試薬が安価だったため残額が生じた。来年度に試薬購入費として使用する予定である。
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